PaaSとは?IaaS・SaaSとの定義の違いやサービスモデルの特徴を解説

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「PaaSがどんなサービスなのかわからない」「PaaSの具体的な活用事例や導入メリットなどを知りたい」このような思いを持っている方は多いのではないでしょうか。この記事では、以下の内容について徹底的に解説します。

  • PaaSの基礎知識
  • 導入事例
  • 選定ポイント

IT部門の担当者の方や経営層の方などは、記事を読むことで、必要なPaaSを選んでうまく利用できるようになるでしょう。ぜひ最後までお読みください。

目次
  1. PaaSとは
    1. PaaSの定義
    2. PaaSが注目される理由
    3. PaaSのサービス例
    4. PaaSの利用例
  2. PaaSとIaaS・SaaSとの違い
    1. IaaSとは
    2. SaaSとは
    3. IaaS・SaaS・PaaSの違い
  3. PaaSのメリット・デメリット
    1. PaaSのメリット
    2. PaaSのデメリット
  4. PaaSとIaaSの連携方法
  5. PaaSの活用事例
    1. IoTシステム開発
    2. ビッグデータ分析基盤
  6. PaaSの導入方法・手順
  7. PaaSの選定ポイント
  8. まとめ

PaaSとは

PaaSは、「Platform as a Service」の略称で「パース」と読みます。アプリケーションを使うためのプラットフォームをインターネット上で利用できるサービスです。

PaaSの提供サービスには、開発環境やデータベース、ライブラリなどがあります。これらのサービスを、利用を従量課金制で使えるのです。

クラウドコンピューティングを使ったサービスには、おもに次の3つがあります。

  • PaaS
  • SaaS
  • IaaS

3つのサービスのなかで、PaaSは、クラウドサービス提供者の管理範囲やサービス利用者のカスタマイズ範囲を、大、中、小で表した場合、中に相当します。自由に構築できる度合いが上から2番目ということです。
次から、PaaSの定義やサービスの範囲についてさらにくわしく解説します。

PaaSの定義

PaaSは、アプリケーション開発用のプラットフォームをインターネットのクラウド上で提供するサービスと定義されます。PaaSにおいて、データセンターに用意されている要素は以下のとおりです。

  • OS
  • ミドルウェア
  • ネットワーク
  • サーバーシステム

PaaSはサービスの範囲としてはおおむねミドルウェア層までを提供するもので、カスタマイズできる余地もサービスごとの制約を受けます。
PaaSの機能には、以下のようなものがあります。

  • 開発環境
  • データベース
  • ライブラリ

特徴を理解してうまく使いこなせるようになりましょう。

PaaSが注目される理由

PaaSが注目される理由は次のようなものがあります。

  • PaaSがビジネスや開発プロセスに大きな利点をもたらす点
  • PaaSの市場が成長している点

PaaSがビジネスや開発プロセスにもたらすおもな利点には、以下のようなものがあります。

  • プラットフォームが用意されているため、すぐに開発を始められる
  • 開発の期間が短くなる
  • 環境の複製や配布が容易にできる
  • コストを削減できる
  • 拡張性が高い

開発の過程などの面において、大きなメリットがあるため、PaaSは注目されています。

また、PaaSの市場が成長中であることも注目される理由の1つです。株式会社アイ・ティ・アールの調査によると、国内IaaS/PaaS市場規模は2025年度に2兆円ほどになると予想されています。この数値から、いかにPaaSなどのクラウドサービス導入が拡大しているかわかるでしょう。近年は、中規模以下の企業でも、クラウドサービスを利用するところが増えています。そのため、これからもPaaSの導入は広がっていくと予想されているのです。

PaaSのサービス例

ここからは、代表的なPaaSプロバイダーや、そのサービス内容などを紹介していきます。解説するPaaSプロバイダーは以下の2つです。

  • Amazon Web Services(AWS)
  • Microsoft Azure

Amazon Web Services(AWS)は、Amazonから提供されるクラウドサービスになります。具体的なPaaSのサービスは、「AWS Elastic Beanstalk」「AWS Lambda」などです。

Microsoft AzureはMicrosoftによって提供されています。「Azure App Service」「Azure Functions」などが、おもなPaaSサービスです。
各サービスの特徴は以下のとおりです。

サービス名特徴
Amazon Web Services(AWS)
  • 長い期間、サービスを提供していて実績が多い
  • サービスの機能が多い
  • AWS Elastic Beanstalkでは、多様な開発言語が使える
Microsoft Azure
  • Microsoft社の商品と適合する
  • トラブルシューティング機能が多い
  • アプリやAPIの構築が可能

PaaSの利用例

PaaSのおもな利用例は以下のとおりです。

  • コンピューティングサービス
  • データベースサービス
  • ビッグデータ分析

コンピューティングサービスはネットワークをとおしてコンピュータ資源が使えるサービスです。従量課金制のサービスを使ってコストを抑える利用例などがあります。ほかにも、クラウドにデータを保存、共有するためにデータベースサービスを使用する例や、データを高速処理するためにビッグデータ分析をする例などもあります。

PaaSを利用すると得られる効果は、開発期間の短縮やコスト削減などです。また、オンプレミス方式とは違い、スケーラビリティが高くアプリケーションの負荷に応じて自動的にリソース調整できます。

PaaSとIaaS・SaaSとの違い

次に、PaaSとIaaS・SaaSとの違いについて解説していきます。

IaaSは、サーバーやネットワークなど提供するサービスです。一方、SaaSは、ソフトウェアまでの範囲を提供します。それぞれの特徴については、のちほどよりくわしい解説します。各モデルの特徴や適用範囲は以下のとおりです。

クラウドサービスモデル特徴
PaaS
  • 適用範囲はミドルウェアまで
  • カスタマイズの自由度は中くらい
IaaS
  • 適用範囲はOSまで
  • PaaSよりもカスタマイズの自由度が高いが、高度なIT技術が必要
SaaS
  • 適用範囲はソフトウェアまで
  • PaaSよりもカスタマイズの自由度が低く、構築の手間が省ける

IaaSとは

ここでは、IaaSについてくわしく解説します。IaaSは、「Infrastructure as a Service」の略称で「イアース」や「アイアース」などと読みます。

IaaSは、情報システムを使うためのITインフラをインターネット上で利用できるサービスと定義されます。ITインフラは、コンピュータの基本になる装置のことを指します。具体的には以下のとおりです。

  • サーバーシステム
  • ネットワーク
  • 電源
  • メモリ
  • ストレージ
  • CPU

IaaSの具体的な用途例は、繁忙期にコストを効率化しつつインフラを拡張する例や、時間や労力をかけずに利用内容を変更する例などがあります。
IaaSの代表的なサービスは以下のとおりです。

  • Amazon Web Services(AWS)
  • Google Cloud
  • Microsoft Azure

また、おすすめの日本国内のクラウドサービスである「さくらのクラウド」は、ブラウザから操作ができるコントロールパネルで直感的な操作感によるインフラ管理が容易な点や、ネットワーク障害を限りなく減らした高速ネットワークがある点など、多くのメリットがあります。

IaaSは、PaaSとは提供されるサービスの範囲が違いますが、非常に関連性が強いです。クラウドサービスを適切に利用していくために、PaaSだけでなくIaaSの詳細についても理解しておくほうがよいでしょう。次のページではIaaSについてさらにくわしく解説します。

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SaaSとは

次に、SaaSについてくわしく解説します。SaaSは、「Software as a Service」の略称で「サース」や「サーズ」などと読みます。

SaaSは、PaaSで使えるミドルウェアまでの範囲に加えて、ソフトウェアをインターネット上で利用できるサービスです。

SaaSの具体的な用途例は、オンラインミーティングアプリや、会計アプリなどがあります。SaaSのソフトウェアは、ユーザーのアカウントが同じならば、場所やデバイスに関係なく、同じサービスを利用できます。SaaSサービスは、アカウント単位で提供されるからです。自宅でのリモートワークや、カフェで仕事をする際に、SaaSサービスを使うことも可能になります。
SaaSの代表的なサービスは、以下のとおりです。

  • Google Meet
  • Zoom
  • Slack
  • Canva
  • マネーフォワード クラウド
  • freee

有名なサービスが多いです。日常の業務において、SaaSのサービスが頻繁に使われていることがわかります。

IaaS・SaaS・PaaSの違い

ここでは、IaaS・SaaS・PaaSの違いについて説明します。

仕様の柔軟性の高さを高い順に並べると、IaaS、PaaS、SaaSとなります。しかし、仕様の自由度が高いと、構築の難易度も上がるのです。自社で必要な要件に合わせて、仕様の柔軟性が適切なサービスを選びましょう。また、用途の違いは表のとおりです。

 IaaSSaaSPaaS
仕様の柔軟性
構築の難易度
おもな用途
  • 仮想サーバー
  • 仮想ネットワーク
  • 会計ソフト
  • メールアプリ
  • ビデオ会議ソフト

  • IoTシステム開発
  • ビッグデータ分析基盤

PaaSのメリット・デメリット

次に、PaaSのメリットとデメリットについて解説します。以下の表にPaaSのメリットとデメリットをまとめました。それぞれくわしく解説します。

メリットデメリット


  • 開発にすぐに取りかかれる
  • 開発にかかる時間を削減できる
  • 環境の複製や配布が容易にできる
  • 初期コストや運用コストを削減できる
  • 拡張性が高い


  • 新たな開発環境へ移行が難しい
  • インターネット障害の際は使えない
  • セキュリティの整備がベンダーに依存する

PaaSのメリット

PaaSのおもなメリットは以下のとおりです。

  • 開発にすぐに取りかかれる
  • 開発にかかる時間を削減できる
  • 環境の複製や配布が容易にできる
  • 初期コストや運用コストを削減できる
  • 拡張性が高い

PaaSのサービスには、アプリケーションを使うためのプラットフォームが準備されています。そのため、開発への着手がすぐにできることや、開発時間の削減などがメリットです。また、PaaSのプラットフォームを利用すれば、同じ環境の複製や配布が楽にできることも、利点の1つになります。

ハードウェアなどの購入が不要な点や、従量課金制のサービスがある点などから、コスト削減にもなります。また、オンプレミスの方式では、利用内容の変更が難しかったのに対して、PaaSでは、柔軟な変更が可能です。

PaaSのデメリット

PaaSのおもなデメリットは以下のとおりです。

  • 新たな開発環境へ移行が難しい
  • インターネット障害の際は使えない
  • セキュリティの整備がベンダーに依存する

PaaS環境に強く依存している場合、新たな開発環境へ移行が難しいというデメリットがあります。実行のための基盤や環境を、外部から借りるためです。

また、PaaSはインターネット上で利用するため、インターネット障害で使えなくなるおそれもあります。

PaaSサービスのセキュリティは、ベンダー側が整備します。そのため、コンピューターウイルスがベンダー側に侵入したら、ユーザー側の情報がさらけ出される危険性があります。ユーザー側の個人情報がベンダー側に依存しているのです。

このようなデメリットを踏まえて、PaaS導入時には、以下の点に注意しましょう。

  • 新たな開発環境へ乗り換えるのが困難なので、PaaSを選ぶ際は、十分に検討する
  • インターネット環境を見直す
  • 個人情報についてのポリシーを出しているベンダーから購入する

対策をすることで、デメリットによる損失を少なくできます。

PaaSとIaaSの連携方法

同一クラウドプロバイダー内でPaaSとIaaSを組み合わせることで、アプリケーション開発とインフラ管理を効率化できます。連携の構築は、以下のステップに沿って進めるとよいでしょう。

  1. 管理するデータがどんなものか明確にする
  2. データをどのクラウドサービスで管理するべきか考えて分類する
    1. PaaS向き:アプリケーション実行環境が標準化できるもの
    2. IaaS向き:カスタマイズ性が必要なもの
  3. 最適なサービスを選択する

PaaSとIaaSを連携させることで、アプリケーション開発とインフラ管理を効率化できます。また、PaaSとIaaSがそれぞれの短所を補うため、柔軟な対応が可能です。

また、ハイブリッドクラウドの場合は、トラブルの対応は自社でしなければいけません。そのため、知見が深い担当者とともに運用するのがおすすめです。運用メリットを活かしてうまく運用しましょう。

PaaSの活用事例

PaaSのおもな活用事例は以下のとおりです。

  • IoTシステム開発
  • ビッグデータ分析基盤

それぞれくわしく解説していきます。

IoTシステム開発

次に、PaaS とIoTシステム開発の関係についての解説です。IoT技術が使われている製品のセンサーによって、利用状況、環境などのデータが得られます。インターネットを通じてデータを集めることで、大量のデータを集められるのです。

膨大なデータに対応するためにクラウドサービスを使用します。PaaSのサービスを使うことで、情報量に合わせてスケーラビリティが柔軟にできたり、コストを効率化できたりなどの利点があります。
また、データ収集方法を自分で作り込まなくても、PaaS側から提供されているものを使用でき開発が容易になることも利点です。

ビッグデータ分析基盤

PaaSを利用したビッグデータ分析基盤の構築方法について解説します。ビッグデータ分析では、データが膨大で容量不足のおそれがありますが、PaaSサービスでは、保存容量を容易に増減できます。

データ処理、機械学習、AIモデル開発において、PaaSを使えば以下のメリットがあります。

  • サービスの導入や変更がしやすい
  • 簡単にスケールを変更できてコスト削減できる
  • 保守管理をしなくてよい

PaaSの利点を活かすことで、データ処理や機械学習などが効率化できるのです。

PaaSの導入方法・手順

ここからは、PaaS導入の検討から実際の運用開始までの具体的な手順を解説します。

  1. 必要な要件を明らかにする
  2. 開発フローに適したサービスを選ぶ
  3. 実際に導入する
  4. テストをする

最初に、必要な要件を明らかにしましょう。予算や開発するアプリの規模など、できるだけ具体的にするとよいです。その後、各PaaSサービスのメリットや特徴を調べ、自社の開発フローに適したものを選んでください。実際に導入したあとは、テストをおこない、運用するときにトラブルが起こらないようにしましょう。

PaaSの選定ポイント

次に、自社のニーズに合ったPaaSを選択するための選定ポイントを紹介します。

  • セキュリティ面で十分な対策がされているかどうか
  • 自社に適した種類をチェックする
  • 開発環境が自社に合っているか

PaaSサービスを選ぶうえで、セキュリティ面で十分な対策がされているかどうかは大切です。外部機関のセキュリティ監査や、継続的なパッチ対応などが実行されているかをチェックしましょう。

開発環境が自社に合っているかについても調べましょう。プログラミング言語やOSなどがどのくらいサポートされているのか確認すべきです。

まとめ

この記事では、PaaSを導入するメリットや、ほかのクラウドサービスとの違いなどについて解説しました。PaaSの具体的なメリットには、開発期間の短縮や柔軟な拡張性などがありました。

一方で、別の開発環境へ移行の困難さや、ベンダー側にセキュリティ面で依存する部分など、考慮すべきポイントもあります。選定ポイントを正しく理解することで、最適なPaaSサービスを導入できるようになるでしょう。

現在は、企業に、次々とクラウドサービスなどのインターネット上でのサービスが導入されています。今後もIT化が進むため、つねにリテラシーを高めていかなければ他社に遅れをとってしまいます。このほかにも役立つコラムを多数用意していますので、さまざまなIT用語や知識に関する情報をキャッチしていきましょう。

以下の記事では、ITリテラシーを高めていくうえで重要な用語であるビッグデータについて解説しています。ぜひご覧ください。

さくらのクラウドチーム
制作者

さくらのクラウドチーム

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