「アクセス急増時にサイトがダウンする」「コスト最適化したいけどパフォーマンスも維持したい」といったケースには「オートスケール」機能が効果的です。
本記事では、負荷に応じてサーバーリソースを自動調整する仕組みに加えて、導入するメリットや注意点を紹介します。サーバーの運用を安定させたい、コストを最適化したい担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

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オートスケールとは

オートスケールとは、システムの負荷状況に応じてサーバーリソースを自動的に増減させる機能です。クラウドサービスの重要な特徴のひとつで、需要の変化に合わせてコンピューティングリソースを柔軟に調整できます。

オートスケールを導入することで、サーバーの負荷が増大した際には自動的にリソースを追加したり、負荷が減少すれば不要なリソースを削減したりといったことが可能です。オートスケールにより、コスト効率と安定稼働の両立を実現できます。

「アクセス集中時にサイトが落ちるのではないか」という不安を解消しつつ、「常に余剰リソースを抱えてコストが膨らむ」というリスクも回避できるのです。

オートスケールを理解するうえで重要となる、以下の項目についても解説します。

  • スケールアウト・スケールイン
  • スケールアップ・スケールダウン

スケールアウト・スケールイン

スケールアウトとは、負荷増大時にサーバーの台数を増やす方法を指します。水平スケーリングとも呼ばれ、クラウド環境でよく活用されるスケーリング方式です。

一方で、スケールインとは、負荷減少時にサーバー台数を減らす方法です。

スケールアウトの最大の利点は、サーバー数を増やすことで理論上は無限に処理能力を向上できる点にあります。また、サーバーが複数台になるため、1台が故障してもほかのサーバーでサービスを継続できるという冗長性も得られます。

アクセスが減ったときには、スケールインをおこなうことによって、サーバー数を減らすことで無駄なコストを削減可能です。

スケールアップ・スケールダウン

スケールアップとは、サーバー1台のスペック(CPU、メモリなど)を増強して処理能力を高める方法です。垂直スケーリングとも呼ばれます。

一方で、スケールダウンはサーバーのスペックを下げる方法です。

スケールアップのおもな特徴は、サーバー台数を増やさずに単一サーバーの性能を向上させるため、アプリケーションの変更が少なく済む点です。とくにセッション管理やデータの同期に課題があるステートフルアプリケーションにとって、スケールアップは比較的簡単に導入できるスケーリング手法といえます。

オートスケールのメリット

オートスケールを導入するおもなメリットは、以下のとおりです。

  • リソースの自動調整
  • 障害からの復旧
  • コストの最適化

それぞれのメリットについて、以下でくわしく解説します。

リソースの自動調整

トラフィックの変動に応じてサーバーリソースを自動的に増減させる点は、オートスケールの大きな特徴です。Webサービスやアプリケーションでは、時間帯やイベントによってアクセス数が大きく変動します。

従来は、このような負荷変動に対応するために、常に最大アクセス数を想定したサーバーリソースを用意するか、アクセス集中時のサービス低下を許容するかの選択を迫られていました。しかし、オートスケールを導入することで、リソースを動的に調整し、システムの安定稼働とユーザー体験を維持できます。

リソースの自動調整を効果的に活用するには、適切なメトリクスとしきい値の設定が重要です。自社のビジネス特性や利用パターンを分析し、以下の指標を監視することをおすすめします。

  • CPU使用率
  • メモリ使用率
  • リクエスト数
  • キュー長 など

とくに急激なトラフィック増加が予想される場合は、余裕を持ったしきい値設定にすることで、リソース不足によるサービス低下を防げます。

障害からの復旧

オートスケールには、負荷に応じたリソース調整だけでなく、システム障害からの自動復旧機能も実装されています。

従来のシステムでは、サーバー障害が発生した場合、手動で対応する必要があり、その間にサービスが停止したり、パフォーマンスが低下したりする可能性があります。

しかし、オートスケールを導入すると、障害が発生したインスタンスを自動的に検出し、新しい健全なインスタンスに置き換えられます。これにより、システムの可用性と信頼性が大幅に向上します。

深夜や休日の障害でも、運用担当者の手動介入を最小限に抑えながら、迅速にシステムを回復できるでしょう。

コストの最適化

実際の需要に合わせてリソースを調整することで、無駄なコストを削減できる点もオートスケールのメリットです。

従来のオンプレミス環境や固定構成のクラウド環境では、ピーク時の負荷に対応するために常に余剰リソースを確保する必要があります。そのため、多くのリソースが未使用のままとなり、その分の費用も負担しなければなりません。

一方、オートスケールを導入すれば、必要なときに必要なだけリソースを使用し、不要なときはリソースを解放できるため、コストを最適化できます。たとえば、業務時間内は多くのリソースを確保し、夜間や休日などの低負荷時間帯にはリソースを最小限まで削減することが可能です。

コスト最適化のためには、リソース使用状況の定期的な分析が重要です。クラウドプロバイダーが提供するコスト管理ツールを活用して、リソース使用状況とコストの関係を把握してみてください。

また、スケーリングポリシーの設定では、アプリケーションのパフォーマンス要件とコスト目標のバランスを考慮し、適切なスケーリングのしきい値を設定しましょう。

オートスケールのデメリット・注意点

オートスケールのデメリット・注意点は、以下の3つです。

  • リソース準備に時間がかかるため急激な負荷増加への対応が難しい
  • 設定ミスによる過剰なリソースの削除リスクがある
  • ステートフルアプリケーションでの設計上の工夫が必要

それぞれのデメリット・注意点について、くわしく解説します。

急激な負荷増加への対応が難しい

オートスケールは負荷変動に対応するための優れた機能ですが、タイムラグがあります。新しいインスタンスが起動してから実際にリクエストを処理できるようになるまでには時間がかかります。突発的で急激な負荷増加に対応しきれないことがあるので、注意しましょう。

基本的に、オートスケールは、CPU使用率やメモリ使用率などの監視メトリクスが設定したしきい値を超えると、新しいインスタンスの起動プロセスが始まる仕組みです。

しかし、インスタンスの起動、OSの起動、アプリケーションのデプロイ、ヘルスチェックの完了など、一連のプロセスには通常数分の時間を要します。その間にシステムが過負荷状態になると、レスポンス時間の増加やエラー発生などの問題が起きる可能性があります。

予測可能なイベントに対しては、スケジュールベースのスケーリングを活用し、事前にリソースを増強することで、対策しましょう。

また、常に余裕を持った最小インスタンス数を維持することも有効です。多少のコスト増にはなりますが、急激な負荷増加の初期段階を乗り切るための「バッファ(余裕)」として機能します。

さらに、CDNやキャッシュサービスなどを活用して、バックエンドサーバーへの負荷を分散させることも効果的な対策です。

過剰なリソースの削除リスクがある

オートスケールには、設定が不適切な場合に必要なリソースまで削除してしまうリスクがあります。とくにスケールイン(リソースの削減)のしきい値設定やクールダウン期間の設定が適切でないと、システムのパフォーマンス低下やサービス停止につながる恐れがあるでしょう。

スケールインのしきい値が高すぎる場合、一時的な負荷減少に過剰に反応してリソースを削除してしまうことがあります。

また、クールダウン期間(スケーリングアクションの間隔)が短すぎると、負荷の小さな変動に対して頻繁にスケールイン・アウトを繰り返す「フラッピング」と呼ばれる現象が発生します。その結果、システムが不安定になることがあり、注意が必要です。

過剰なリソース削減を防ぐためには、以下の解決策がおすすめです。

  • スケールインのしきい値に余裕を持たせる
  • 適切なクールダウン期間を設定する
  • ビジネスの要件に合わせた最小インスタンス数を設定する
  • 本番環境に導入する前に、テスト環境でスケーリングポリシーを十分に検証する

過剰なリソース削除を防ぐためには、スケールインのしきい値は慎重に設定し、余裕を持たせることをおすすめします。具体的には、CPU使用率が20〜30%を下回った状態が一定時間続く場合にのみスケールインするなど、保守的な設定にしておくとよいでしょう。

また、本番環境に導入する前に、テスト環境でスケーリングポリシーを十分に検証することも重要です。実際の負荷パターンを模したテストをおこない、スケーリングが適切に機能することを確認してから本番導入を進めましょう。

まとめ

オートスケール機能は、負荷に応じて自動的にリソースを増減させることで、パフォーマンスとコスト効率を両立させる強力なツールです。

リソースの自動調整や障害からの復旧といったメリットがあります。一方で、急激な負荷増加への対応が難しい点や、過剰にリソースを削減してしまうリスクがデメリットとして挙げられます。

メリット・デメリットを事前に把握したうえで、オートスケールの導入を進めましょう。

さくらのクラウドのオートスケール機能は、サーバーに負荷が発生した際に対象サーバーのスペックアップをおこなう「スケールアップ」と、台数を増やす「スケールアウト」の両方をご利用いただけます。サーバーの負荷が解消されると、自動的にスケールダウンやスケールインがおこなわれます。

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2025年4月24日公開