クラウド開発とは?メリットや適したケース、注意点までを解説

ビジネス環境の変化が加速するなか、システム開発のスピードと柔軟性が企業競争力を左右する時代になりました。従来のオンプレミス環境での開発では、サーバー調達や環境構築に時間がかかるといった課題がありました。クラウド環境での開発「クラウド開発」は、これらの制約を減らし、迅速な開発が可能になる開発手法として期待されています。
本記事では、クラウド開発の基本から、導入時のメリット、クラウド開発が向いているケース、さらに実際に検討する際の注意点まで、わかりやすく解説します。
- クラウド開発とは?オンプレミスとの違い
- クラウド開発のメリット
- クラウド開発が向いているケース・向いていないケース
- クラウド開発を検討する際の注意点
- クラウド開発とは
- クラウド開発とオンプレミス開発の違い
- クラウド開発のメリット
- 開発スピードの向上
- 初期投資・運用コストの最適化
- 拡張性・柔軟性の高さ
- 運用負荷の軽減
- クラウド開発が向いているケース・向いていないケース
- クラウド開発が向いているケース
- クラウド開発が向いていないケース
- クラウド開発を検討する際の注意点
- 開発目的の明確化
- 自社に合ったクラウドサービスの選定
- 監視・運用体制の整備
- まとめ
クラウド開発とは
クラウド開発とは、クラウドサービスが提供するインフラストラクチャやプラットフォームを活用して、アプリケーションやシステムを開発する手法です。サーバーやネットワークなどのハードウェアを自社で用意する必要がなく、初期投資を抑えて迅速に開発環境を構築できるのが特徴です。
クラウド開発により、企業は新しいサービスや機能を短期間でリリースできるようになり、ビジネス環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できるようになります。
クラウド開発とオンプレミス開発の違い
オンプレミス開発は、自社でサーバーやネットワーク機器を保有し、システムを構築する手法です。初期投資や準備期間は必要ですが、要件に合わせた柔軟な設計や高度なセキュリティ管理が可能です。
一方、クラウド開発は初期費用を抑え、短期間で環境を整えられるのが特徴です。従量課金により無駄なコストを削減でき、インフラ管理をベンダーに任せることで運用負荷も軽減できます。ただし、カスタマイズには一定の制約があります。
クラウド開発とオンプレミス開発との違い
| 項目 | クラウド開発 | オンプレミス開発 |
| 初期費用 | 初期費用を抑えられる | まとまった資金が必要 |
| 運用コスト | 使用量に応じて変動 | 使用量にかかわらず一定の費用が発生 |
| 環境構築のスピード | 管理画面から数分~数時間で環境構築が可能 | ハードウェア調達から設置・設定まで数週間~数か月を要する |
| カスタマイズ性 | クラウド事業者のサービスに依存するため、制約がある | 自社要件に合わせた自由な設計が可能 |
| 拡張性 | 管理画面の操作だけでリソースを増減できる | 追加投資と物理的な作業が必要 |
| 運用負荷 | インフラ管理はクラウド事業者側が担う | 自社で管理 |
| セキュリティ | クラウド事業者が提供するセキュリティ基盤を活用可能 | 自社で管理が必要だが、独自要件に対応可能 |
オンプレミスとクラウドの特性の違いについて詳しくはこちら
クラウド開発のメリット
クラウド開発には、従来のオンプレミス開発にはない、次のような利点があります。
開発スピードの向上
クラウド開発では、管理画面からの操作だけで開発環境を整えられます。
オンプレミス開発に比べて環境準備の期間を大幅に短縮でき、開発チームは本来の業務に専念できます。新サービスの立ち上げや既存システムの改修をスピーディに進められることから、変化の激しいビジネス環境にも柔軟に対応できるでしょう。
初期投資・運用コストの最適化
クラウド開発では、サーバー機器の購入やデータセンターへの設置といった大規模な初期投資が不要です。月額の利用料金だけで開発を始められ、従量課金制により利用量に応じたコスト負担が可能なため、運用コストの最適化を図れます。
拡張性・柔軟性の高さ
クラウド環境は、ビジネスの成長に合わせてシステムを段階的に拡張できます。将来の需要を見越して過剰な投資を行う必要がなく、必要なときに必要な分だけリソースの追加が可能です。
また、管理画面から短時間でスケールアップ・ダウン(リソースの増減)が行えるほか、オートスケーリング機能を使えばアクセス負荷に応じて自動調整も可能です。
スケールアップについて詳しくはこちら
運用負荷の軽減
クラウドサービスを利用すれば、ハードウェアの故障対応やOSのセキュリティパッチ適用、バックアップ管理など、多くの運用作業をクラウド事業者が担います。従来は自社で対応していた作業が自動化されるため、運用負荷を大幅に削減できます。
IT人材が不足する企業にとっては、特に大きなメリットといえるでしょう。
クラウド利用のメリットについて詳しくはこちら
クラウド開発が向いているケース・向いていないケース
クラウド開発は、すべての企業やプロジェクトに適しているとは限りません。
自社の状況やシステムの特性を踏まえ、クラウドが本当に適した選択肢かどうかを見極めることが大切です。
クラウド開発が向いているケース
クラウド開発が特に効果を発揮するのは、以下のようなケースです。
- 初期投資を抑えたいプロジェクト: 限られた予算で迅速にサービスを立ち上げたい新規事業やスタートアップ
- アクセス変動が大きいシステム: ECサイトやキャンペーンサイトなど、時期によって負荷が大きく変動する
- スピード重視の開発: 市場投入までの期間を短縮し、競合優位性を確保したいプロジェクト
- 実証実験(PoC)やテスト環境: 短期間で構築・検証し、不要になればすぐ削除できる柔軟性が求められる
これらのケースでは、初期コストの低さ、拡張性、開発スピードといったクラウドのメリットを最大限に活用できます。
クラウド開発が向いていないケース
一方で、次のようなケースでは、クラウド開発よりも、オンプレミス開発のほうが適している可能性があります。
- 厳格なデータガバナンス要件がある場合:金融機関や医療機関など、法規制によりデータを自社で完全に管理する必要がある
- 既存システムとの密接な連携が必要な場合:基幹システムとリアルタイムでデータ連携が求められ、ネットワーク遅延が業務に影響する
- 長期的に安定稼働し使用量が一定の場合:利用量が予測可能で変動が少なく、長期運用が前提となる
- 特殊なカスタマイズが必須の場合:クラウドの標準仕様では実現できない特殊要件がある
- 段階的移行が難しい大規模システムの場合:既存の大規模システムを一度に移行するリスクが高く、段階的移行も技術的に困難
ただし、これらの場合でも、必ずしもオンプレミス開発に限定する必要はありません。
たとえば、機密性の高いデータはオンプレミスで管理し、開発やテスト環境はクラウドで運用する「ハイブリッドクラウド」構成を採用すれば、両者のメリットを活かすことが可能です。自社の要件を整理したうえで、最適な構成を検討することが重要です。
ハイブリッドクラウドについて詳しくはこちら
クラウド開発を検討する際の注意点
クラウド開発には多くのメリットがある一方で、導入を成功させるためには事前に押さえておくべき注意点があります。
開発目的の明確化
クラウド開発を始める前に、クラウド開発の目的を明確にすることが重要です。
コスト削減、開発スピードの向上、拡張性の確保など、優先すべき目標によって選ぶべきクラウドサービスや構成が変わってきます。オンプレミス開発が適している場合もあるでしょう。目的があいまいなまま導入を進めると、過剰なスペックで無駄なコストが発生する、必要な機能が不足するといった問題が生じるおそれがあります。事前に整理しておくことが必要です。
自社に合ったクラウドサービスの選定
クラウドサービスを選定する際は、必要な機能やコスト体系、サポート体制などを総合的に評価することが重要です。コスト面では、データ転送量やストレージ、バックアップなど、複数の要素で料金が発生します。想定される使用量をもとに、あらかじめ月額費用をシミュレーションしておきましょう。
外資系のクラウドサービスの場合、料金が外貨建てとなるため、為替変動の影響を受けやすい点に注意が必要です。国産クラウドであれば、円建て料金で利用できるため、予算管理が行いやすいでしょう。
国産クラウドについて詳しくはこちら
監視・運用体制の整備
クラウドサービスでは、利用状況に応じて料金が変動するため、コストを安定して管理するには継続的な監視が欠かせません。リソースの使用状況やコストの推移を定期的に確認し、異常があれば迅速に対応できる体制を整えておきましょう。
クラウドサービスでは「責任共有モデル」が採用されています。インフラ部分はクラウド事業者が管理しますが、アプリケーションや設定のデータ保護などのクラウド上のセキュリティ対策は自社の責任となります。
アクセス権限の管理やログ監視を徹底し、自社の責任範囲を明確にしたうえで、運用ルールの整備やクラウドスキルを持つ人材の育成を計画的に進めることが重要です。
まとめ
クラウド開発は、初期投資を抑えて短期間でシステムを構築したい場合に有効な手法です。
開発スピードの向上、コスト削減、高い拡張性、運用負荷の軽減など、多くのメリットがあり、新規事業やアクセス変動の大きいサービスに適しています。
一方で、厳格なデータガバナンスが求められる場合や、長期的な安定稼働が前提のシステムでは、オンプレミス環境のほうが適していることもあります。
自社の要件やビジネス目標を踏まえ、クラウドが本当に最適な選択かどうかを慎重に見極めることが大切です。
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