VPS運用が増えてきたら検討したい、さくらのクラウドの特長と活用ポイント

公開:最終更新日:
VPS運用が増えてきたら検討したい、さくらのクラウドの特長と活用ポイント

「さくらのVPS」を利用して、気づけば4台、10台と増えている。そうした運用を続けているユーザーが増えています。社内の業務システムを支える情報システム部門でも、Webサービスを外販するため開発・運用する部門でも、台数が増えたサーバーには共通の課題があります。 

そこで役に立つのが、「さくらのクラウド」を併用するという考え方です。現在のVPSを使い続けたまま、必要な部分だけをさくらのクラウドで拡張できます。 

従来のさくらのクラウドは、インフラを部品として組み合わせるIaaS型クラウドとして提供されていました。現在では、ガバメントクラウドへの対応をきっかけとして、システムが必要とする機能を大幅に拡充しています。これらの機能は、VPSとクラウドを併用する場合にも活躍します。 

この記事では、さくらのVPSとさくらのクラウドの違いを整理しながら、どの機能がシステム拡張に役立つのかを解説します。 

この記事でわかること
  • VPSとクラウドの考え方の違い
  • VPSをクラウドで拡張する活用ポイント
  • VPSとクラウドは組み合わせて使える
目次
  1. 用途ごとにサーバーを用意するVPS 
  2. VPSとクラウドの考え方の違い 
    1. 基本機能の違い 
    2. バックアップ 
    3. データベース
    4. ネットワーク
  3. VPSをクラウドで拡張する活用ポイント 
    1. クラウドの機能を利用して運用・保守を効率化する 
    2. プライベートネットワーク構成
    3. 暗号鍵とシークレットの一元管理
  4. VPSとクラウドは組み合わせて使える
  5. まとめ

用途ごとにサーバーを用意するVPS 

VPSは、用途ごとにサーバーをすぐに用意できるサービスです。Webサイト、ファイル共有、業務アプリケーション、検証環境など、必要になるたびに1台ずつ配置できます。 

1台ごとの構成はシンプルで、担当者が全体を把握しやすくなります。同じゾーン内であれば、VPS同士をローカルネットワークでつなぎ、インターネットを介さずに通信できます。 

小規模な業務システムや、単一サーバーで完結するサービスを運用する場合、VPSは現在でも合理的な選択肢です。 

ただ、台数が増えてくると、問われることが変わってきます。1台ごとの性能よりも、サーバー同士をどうつなぐか、外の拠点やユーザーとどうつなぐかという、システム設計が中心になっていきます。増大するサーバーの運用の負担も増えていきます。 

VPSとクラウドの考え方の違い 

さくらのVPSとさくらのクラウドは、どちらも仮想サーバーを使えるサービスです。違いは性能の向上ではありません。一言でまとめると、VPSはサーバー単位で利用するサービス、クラウドはサーバーやネットワーク、各種サービスを組み合わせてシステム全体を構築できるサービスです。 

VPSでは、CPU、メモリー、ディスクがセットになったプランを、サーバー1台の単位で契約します。用途ごとに1台ずつ置いていく使い方に向いています。 

クラウドでは、サーバー、ディスク、データベース、スイッチ、ルーター、ロードバランサーなどを、それぞれ部品として利用します。ユーザーは、部品同士をネットワークでつなぎ、システムを構築できます。 

両者の違いを次表にまとめます。 

観点 さくらのVPS さくらのクラウド
契約の単位 サーバー1台。CPU、メモリー、SSDがセットのプラン サーバー、ディスク、スイッチ、ルーター、ロードバランサー、データベースなどを個別に用意
設計の考え方 用途ごとに1台ずつ設置 部品同士をつないで、システムを構築
大きさを変える 上位プランへの変更のみ 上げ下げできる
台数を増やす 同じゾーンのVPSを追加して、ローカルネットワークでつなぐ サーバーを追加し、振り分けできるオートスケール
運用の範囲 OS、ミドルウェア、セキュリティー対策をユーザーが担う サーバーの中はユーザーが担うが、データベースやルーターなどはマネージドサービスとして利用でき、OSやミドルウェアの構築・保守の負担を軽減

VPSをクラウドで拡張するとき、検討する必要があるのは、性能の差だけではありません。台数が増えたあとに、設計の対象、用意する部品、各部品のサイジングを決める時期が変化します。 

クラウドでは、サーバー単体の性能だけでなく、ネットワーク構成や負荷分散、可用性を含めたシステム全体の設計が重要になります。そのため、サーバーやネットワーク機器、各種サービスの組み合わせを考えながら構成を検討します。 

また、クラウドでは、ルーターやロードバランサー、データベースなどを、自分で構築しなくても、部品として配置できるようになります。部品の運用はサービス事業者に任せ、ユーザーはシステム全体の開発と運用に集中できます。 

さらに各部品のサイジングを柔軟に設定できます。VPSは上位プランへの変更だけですが、クラウドのサーバーは、コア数やメモリーを上げることも下げることもできます。サーバーを追加してロードバランサーで振り分けたり、負荷に合わせて台数や大きさを自動で変えたりと、柔軟に処理能力を調整できます。 

基本機能の違い 

このようにVPSとクラウドでは、考え方に大きな違いがあります。 

さくらのVPSをベースにして、さくらのクラウドの基本機能で何が変わるかをまとめると次のようになります。 

項目 さくらのVPS さくらのクラウド
サーバーの大きさ 決まったプランから選ぶ コア数とメモリーを組み合わせて選ぶ。大規模な構成まで選べる
サーバーの種類 Linux、Windows Server 通常サーバーに加えて、コア専有、石狩第1ゾーンのGPU、専有ホスト。コンテナをスケールさせるAppRunも利用可能。
ディスク プランにSSDを含む。容量を増やすオプションあり ディスクを別につくり、停止中に付け外しできる。SSDプランと、HDDの標準プラン
バックアップ 標準の機能もオプションもない。世代を残す仕組みは自分でつくる ディスクを丸ごと保存するアーカイブと自動バックアップ
データベース 自分でサーバーに導入して運用する 操作だけでDBサーバーを用意できる。2台構成で冗長化可能。定期バックアップは基本機能で、利用者が有効にする
ネットワーク パケットフィルターと同一ゾーンのスイッチ ルーター+スイッチ、VPNルーター、L3ベースのネットワークスイート 
サーバー間の接続同じゾーン内のローカルネットワーク スイッチ+ルーター。対応ゾーンでは、ブリッジ接続でリージョンをまたげる 
負荷分散なし。VPSでロードバランサーを実現 ロードバランサー(複数の種類) 
オートスケールなし。台数やプランは自分で変える 負荷に合わせて、サーバーの台数や大きさを自動で増減 
権限管理会員ID単位 プロジェクトや組織・フォルダーなど柔軟に権限付与。IAMポリシー、サービスプリンシパルも利用可能 
暗号鍵の管理なし。鍵の保管はユーザーがおこなう 暗号鍵の生成・保管・ローテーション(KMS)。ディスク暗号化やシークレットマネージャーと連携 
監視サーバー監視 シンプル監視で死活監視と通知。モニタリングスイートでログとメトリクスを収集 
自動化スタートアップスクリプト、API スタートアップスクリプト、API、Terraformによるシステム構築 
リージョン石狩・大阪・東京 石狩・東京 
公的な評価― ISMAP登録、ガバメントクラウド採択 
サポートメール、電話(コールバック予約) 通常サポートに加え、24時間365日対応の有償プレミアムサポートを選択可能 

なかでも、構築・運用に大きな影響を与える4点について解説します。 

バックアップ 

さくらのVPSには、標準でもオプションでもバックアップ機能がありません。別のサーバーへの複製や、手元への保存など、世代を残す仕組みを自分で用意する必要があります。NFSは同一ゾーンから使える追加ディスクであり、それだけでは世代を戻せません。 

さくらのクラウドでは、ディスクを丸ごと保存するアーカイブと、それを定期的につくる自動バックアップが利用できます。保存した時点の状態を、最大10世代まで残しておけます。対象は1TBまでです。ただし、戻すときはアーカイブからディスクをつくり直します。暗号化を有効にしたディスクは対象外です。 

データベース

さくらのクラウドは、コントロールパネルの操作だけでつくるデータベース(アプライアンス)を提供しています。PostgreSQLとMariaDBが利用でき、OSやDBアプリケーションの導入は不要です。 

冗長化は2台構成です。ホスト障害時には、もう一方へ切り替わります。基本機能で定期バックアップを提供しています。 

ネットワーク

VPSのローカルネットワークは、同じゾーン内のVPS同士をつなぐ機能です。別のゾーンとは、そのままではつながりません。 

クラウドでは、スイッチに加えて、ルーター、ロードバランサー、閉域網への接続といった部品が利用できます。リージョンをまたいだ接続や、拠点とのVPNも、クラウドが用意した部品で構築できます。さらに、L3ベースのネットワーク構築を可能にするネットワークスイートも用意しています。 

VPSをクラウドで拡張する活用ポイント 

VPSを追加しながら運用していると、負荷分散、ネットワーク接続、暗号鍵の管理をそれぞれのサーバーで個別に考える必要があります。クラウドでは、こうした機能をサーバーから切り離し、システム全体の機能として利用できます。 

クラウドの機能を利用して運用・保守を効率化する 

複数のサーバーで構成されたシステムでは、Web、アプリケーション、データベースといった役割ごとにサーバーを分離します。役割を分離すると、負荷の高い部分だけサーバーを増やしたり、更新や再起動の影響範囲を限定したりと、それぞれの要件に応じた構成を取りやすくなります。これはVPSでもクラウドでも共通です。 

さくらのクラウドでは、さらにロードバランサーやデータベース、VPNルーターなどの機能をサービスとして利用できます。これらを利用することで、たとえば、次のような機能の運用負担を軽減できます。 

  • データベース:データベース用のサーバーを自分で構築する場合に比べて、OSやデータベースソフトウェアの構築・運用を減らせます。 
  • ロードバランサー:負荷分散のためのソフトウェアをサーバーに導入・運用することなく、複数のサーバーへアクセスを振り分けられます。 
  • VPNルーター:VPNやファイアウォールのためにルーター用のサーバーを構築することなく、拠点間接続やアクセス制御に必要な機能を利用できます。 

このように、クラウドのメリットはサーバーを役割ごとに分けられるだけに留まらず、システムに必要な機能をサービスとして組み合わせて、自前で構築・運用する範囲を減らせることにあります。 

プライベートネットワーク構成

クラウドでは、インターネットに接続しないスイッチにサーバーを配置することで、外部から直接アクセスできない構成を実現できます。業務システムのサーバーにグローバルIPアドレスを割り当てる必要がなくなり、公開が必要な通信だけをVPNルーターや公開用サーバー経由で受け付けることができます。 

公開系と業務系のネットワークを分離することで、ネットワーク境界とアクセス経路を構成として明確に定義できます。サーバー台数が増えても、アクセス制御や監査の対象をネットワーク境界に集約できるため、運用管理をおこないやすくなります。 

暗号鍵とシークレットの一元管理

VPSでは、暗号鍵やパスワードなどの機密情報を、利用者が各サーバー上で管理する必要があります。さくらのクラウドのKMSを利用すると、暗号鍵の生成、保管、ローテーションをサーバーとは独立して管理できます。 

また、ディスク暗号化やシークレット管理で利用する鍵をKMS上で一元的に管理できます。鍵の更新や廃棄をサーバー台数と切り離して実施できるため、運用手順を統一しやすくなります。鍵ファイルの保管場所や更新手順を担当者ごとに管理する必要がなくなり、運用負荷の軽減にもつながります。 

VPSとクラウドは組み合わせて使える

このように、さくらのVPSとさくらのクラウドは、どちらか一方を選ぶだけのものではありません。そこで、両方を組み合わせるための仕組みを用意しています。 

  • ブリッジ接続:対応ゾーンのVPSスイッチと、さくらのクラウドのスイッチをL2でつなぎ、インターネットを通さずに通信できます。VPS側の対象は石狩第1、東京第2、大阪第3です。同一会員IDであることが条件で、ルーター+スイッチには接続できません。 
  • エンハンスドロードバランサー:VPSとクラウドのサーバーを、グローバルIPであれば同じ入口から振り分けられます。 
  • マイグレーション:同一会員IDのVPSディスクからアーカイブをつくり、そのアーカイブをもとにさくらのクラウドのサーバーを作成できます(対象外:Windows Server、ベアメタルプラン、1TBを超えるディスク、NFS)。 

こうした仕組みがあるため、現行のVPSによるシステムをクラウドに拡張することが容易になります。 

まとめ

VPSとクラウドの違いは、「サーバー単位で利用」するか「システム全体を設計」できるかです。現在のVPSを使い続けながら、冗長化や負荷分散、拠点間接続、アクセス制御といった要件が必要になった部分だけを、さくらのクラウドで拡張できるのです。 

可知 豊
制作者

クラウド事業本部 テクニカルコミュニケーター

可知 豊

IT系のライティング・コンテンツ制作などに関わり30年以上。パソコンの解説書・マニュアル作成に加えて、プログラミング学習コンテンツの動画作成、パソコン教室のインストラクター、イベント出展、オープンソースのライセンス解説、スタートアップのマーケティングなど豊富な経験を持っています。