VMwareからの移行における選択肢と課題は?円滑に進めるポイントを解説

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VMwareのライセンス変更により多くの企業が移行を検討しています。本記事では、VMwareからの移行が注目される背景から移行先の選択肢、移行時に押さえるべきポイントまでを解説します。

この記事でわかること
  • VMWareからの移行が注目されている背景
  • VMWareからの移行先の選択肢
  • VMWare移行を検討する際に押さえておきたいポイント
目次
  1. なぜVMwareからの移行が注目されているのか
  2. VMwareのおもな移行先
    1. KVM(オープンソース基盤)
    2. Microsoft Hyper-V(商用)
    3. Nutanix AHV(商用)
  3. VMwareからの移行における課題
    1. コストの見積もり
    2. アプリケーションやデータの互換性
    3. 業務への影響
    4. スキル・人材リソース不足
  4. VMwareからの移行で押さえるべきポイント
    1. 現行環境の棚卸し
    2. 適切な移行先・移行方法の選定
    3. PoCによる事前検証
    4. 段階的な移行
    5. 外部サポートの活用
  5. まとめ

2023年にブロードコム社(Broadcom Inc.)がVMwareを買収したことにともない、VMware製品のライセンス体系が変更されました。コスト増や先行きの不透明さから、多くの企業がVMwareからの移行を検討するようになりました。本記事では、移行が注目される背景から移行先、移行にあたっての課題を取り上げ、移行を進めるうえで押さえるべきポイントを解説します。

なぜVMwareからの移行が注目されているのか

VMwareは仮想化技術の分野で長年トップシェアを誇り、多くの企業がその製品を基盤として活用してきました。1台の物理サーバー上で複数の仮想マシンを動かすハイパーバイザーは、同社の代表的な製品です。

仮想マシンやハイパーバイザーについて詳しくはこちら

しかし、2023年のブロードコム社(Broadcom Inc.)によるVMwareの買収を機に、製品の提供・ライセンス体系に大きな変化が生じました。2024年以降は製品の永続ライセンスが廃止され、完全なサブスクリプション制に移行しました。

企業にはコスト増加を受け入れてVMwareを継続利用する選択肢もありますが、大規模環境を抱える企業ではコストの大幅な増加が避けられません。そのため、長期的なIT戦略やコスト最適化の観点から、多くの企業が代替基盤への移行について検討を活発化させています。

VMwareのおもな移行先

VMwareからの移行先には、いくつかの選択肢があります。おもな移行先を紹介します。

KVM(オープンソース基盤)

KVM(Kernel-based Virtual Machine)は、Linuxカーネルに組み込まれたオープンソースのハイパーバイザーです。ライセンス費用が無料な点が最大の特徴です。カスタマイズの自由度が高い反面、管理ツールが限定的で、運用には高度な技術スキルが必要になります。技術力が豊富で、オープンソース環境での運用に慣れた組織に適している選択肢といえます。

参考:KVM

KVMについて詳しくはこちら

Microsoft Hyper-V(商用)

マイクロソフト社が提供するハイパーバイザーで、Windows Serverの機能として組み込まれています。Microsoft製品との親和性の高さや既存のWindowsスキルを活用できる点が特徴です。ただし、Linux環境では一部の高度な機能に制約があるため、Linux環境を主力とする企業では、導入前に注意が必要です。

参考: Hyper-V documentation | Microsoft Learn

Nutanix AHV(商用)

Nutanix AHVは、Nutanix社のハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)に標準搭載されているハイパーバイザーです。HCIとは、サーバー、ストレージ、ネットワークをソフトウェアで統合し、複雑な運用を簡素化できる基盤です。追加ライセンス費用が不要で運用管理が容易である一方、Nutanix製品全体への依存が生じるため、長期的なIT戦略を慎重に検討する必要があります。

参考:Nutanix AHV ハイパーバイザー | 企業向け高性能仮想化ソリューション | Nutanix

VMwareからの移行における課題

VMwareからの移行にあたっては、次のような課題があります。

コストの見積もり

移行にはライセンス費用だけでなく、設計・検証、移行ツールの導入、スタッフのトレーニングなど間接的コストも発生します。ネットワーク機器やバックアップ環境の更新、移行期間中の二重運用による追加負担も無視できません。計画外の出費を防ぐためには、事前に詳細な見積もりをおこなうことが重要です。

アプリケーションやデータの互換性

仮想マシンの構成やフォーマットの違いによって、移行後にアプリケーションが正常に動作しないケースがあります。リスクを抑えるには、対象アプリケーションごとに動作検証を実施し、データ変換や整合性チェックを事前に済ませる必要があります。

業務への影響

移行作業に伴うシステム停止は、重要システムにかかわる場合には、業務継続に直結するリスクとなります。予期せぬ不具合で移行が滞ると、ダウンタイムが長引く可能性もあります。これを防ぐには、移行手順を事前にシミュレーションし、ダウンタイムを最小化する計画を立てることが不可欠です。

スキル・人材リソース不足

新しい基盤の管理方法や運用ノウハウを学ぶ時間が必要です。学習コストや専任要員の確保は、移行計画で障壁となる場合があります。必要なスキルを持つ人材を早期に確保し、外部ベンダーやパートナーの支援を活用する計画を立てることも効果的です。

VMwareからの移行で押さえるべきポイント

VMwareからの移行を成功させるには、技術検討だけでなく全体を見据えた計画と準備が欠かせません。以下のポイントを押さえておくことで、リスクを最小限に抑えてスムーズな移行が可能になります。

現行環境の棚卸し

まず、自社の仮想基盤・アプリケーション・ネットワーク構成を正確に把握することが出発点です。依存関係や重要度を明らかにすることで、無駄な作業や移行後のトラブルを防ぎ、計画を円滑に進めやすくなります。

適切な移行先・移行方法の選定

コスト削減、ベンダーロックイン回避など移行の目的を整理したうえで、移行先の基盤を選ぶことが重要です。目的によって、選ぶべき基盤は異なります。

移行を効率化するために、専用の移行ツールを活用することも有効です。移行作業の手間やリスクを大幅に軽減できます。

自社の優先順位を整理し、基盤と移行方法を組み合わせて選定することが重要です。

PoCによる事前検証

選定した移行戦略や利用予定の移行ツールは、事前に小規模なPoC(概念実証)で確認することが不可欠です。実環境に近い条件でテストをおこなうことで、互換性やパフォーマンスの問題を早期に発見できます。

段階的な移行

一度にすべてを切り替えるのではなく、システムを段階的に移行する方法が効果的です。業務への影響が大きい重要システムは夜間や休日など稼働に支障が出にくいタイミングを選び、周辺システムから順に移行することで、業務への影響を最小化できます。

外部サポートの活用

新しい基盤の知識や運用ノウハウを自社だけで短期間で習得するのは困難です。手厚いサポート体制を持つベンダーを選定すれば、必要に応じて適切な支援を受けられ、移行計画を円滑に進められます。

まとめ

VMwareからの移行には、コスト面や技術面で課題がありますが、事前に十分な棚卸しをおこない、目的に応じた基盤と移行手法を選定することで、リスクを抑えながら進めることが可能です。
なお、VMwareからの移行を機に、IT基盤を根本から見直したい場合は、パブリッククラウドへの移行も選択肢となるでしょう。

さくらのクラウドは、国内拠点で安定したサービスを提供するクラウドサービスとして、VMwareからの移行を検討している企業にとって信頼性の高い選択肢の1つです。

VMware環境を対象とした移行ツールと専門チームによる支援を組み合わせた「マイグレーションサービス」を提供しており、効率的かつ安心感のある移行が可能です。

VMwareからの移行でお悩みの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

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