クラウド破産を防ぐには?コスト高騰の原因と防止策を解説

クラウドサービスは、初期投資を抑えながらシステムを迅速に構築できる利便性から、多くの企業で導入が進んでいます。その一方で、想定以上のコストが発生し、企業の財務を圧迫するケースが見られることから、「クラウド破産」という言葉が注目を集めています。本記事では、クラウド破産が発生する原因を明確にし、防止対策、そして導入・運用時に注意すべきポイントを解説します。
- クラウド破産とその原因とは?
- クラウド破産の具体的な対策
- クラウド破産を防ぐ導入・運用で注意すべきポイント
- クラウド破産とは
- クラウド破産の主な原因
- 円安による円換算支払い額の増加
- リソースの過剰割り当て
- 大量のデータ転送
- 設定ミス
- セキュリティインシデントによる不正利用
- クラウド破産を防止する具体的な対策
- リソースの可視化
- 予算アラートの設定
- タグ付けによる管理
- 自動停止・削除の仕組み
- セキュリティ対策の強化
- クラウド破産を防ぐ導入・運用で注意すべきポイント
- 料金体系の理解
- 運用体制の整備
- 社内教育の徹底
- まとめ
クラウド破産とは
クラウド破産とは、クラウドサービスの利用料金が当初の想定を大幅に超えて高騰し、企業の財務に深刻な影響をおよぼす状態を指します。
自社でサーバーなどの設備を保有・運用するオンプレミス環境では、初期投資はかかるものの、運用コストを予測しやすい傾向があります。一方、クラウドサービスの多くは従量課金制を採用しており、使用量に応じて毎月の請求額が変動する仕組みです。
この柔軟性は、ビジネスの成長に合わせてリソースを調整できるメリットといえます。しかし、適切な管理体制がなければ、想定外に高額な請求が発生し、クラウド破産に陥るおそれがあるのです。
オンプレミスとクラウドの特性の違いについて詳しくはこちら
クラウド破産の主な原因
クラウド破産は、さまざまな要因によって引き起こされます。ここでは、とくに注意すべき原因を解説します。
円安による円換算支払い額の増加
外資系クラウドサービスの場合、米ドル建てで料金が設定されています。円安が進行すると、利用量が一定でも、円換算の支払い額は増加します。
予算策定時に為替変動を見込んでいない場合には、想定外の大幅なコスト増加につながる可能性があります。
リソースの過剰割り当て
実際の利用状況に見合わないリソースを確保すると、不要なコストが発生します。
開発環境のサーバーを停止し忘れたり、本番環境でピーク時を想定した高スペック構成を常時稼働させたりすると、無駄な費用が発生しやすくなります。利用終了後のリソースを放置して、不要なコストを発生させているのも、利用料が高騰する原因のひとつです。
大量のデータ転送
クラウドサービスでは、データ転送量に応じて課金されるのが一般的です。
とくに大容量ファイルの頻繁な送受信、リージョン間転送、外部へのデータ送信(エグレス) などが、転送料金を押し上げる主な要因となります。アクセス数の多いWebサービスやビッグデータを扱うシステムでは、これらの転送料金が想定以上に膨らむことがあります。
設定ミス
設定ミスは、コスト高騰の典型的な原因のひとつです。オートスケーリングの上限設定を誤ってリソースが増え続けたり、ログの保存期間を無期限にしてストレージが肥大化したりするケースがあります。こうしたミスは初期設定だけでなく、システム変更や機能追加の際にも発生しやすい傾向があります。
セキュリティインシデントによる不正利用
アクセスキーの漏えいや脆弱性を突いた不正アクセスにより、クラウドリソースが悪用されることもあります。
不正に大量のサーバーが起動されたり、大量のデータ送信が行われたりすることで、短期間で高額な請求が発生するリスクがあります。
セキュリティインシデントの実例について詳しくはこちら
クラウド破産を防止する具体的な対策
クラウド破産を防ぐための対策を解説します。
リソースの可視化
全体のリソース利用状況を可視化することで、無駄なコストを特定しやすくなります。
各クラウドサービスが提供するコスト管理ツールやダッシュボードを活用し、サービス別・プロジェクト別・部門別などの切り口でコストを分析します。
起動してから長期間経過しているリソースや、月額コストの高いリソースは、利用実態がないまま放置されている可能性があるため、定期的に確認して不要なものは削除することが効果的です。
予算アラートの設定
クラウドサービスの多くは、利用料金が一定額に達した際に通知を受け取れる、予算アラート機能を提供しています。
複数のしきい値で段階的なアラートを設定することで、想定外のコスト増加に早期に気づくことができます。アラートは複数の担当者に通知されるよう設定し、担当者不在時でも対応できる体制を整えることが望ましいでしょう。
タグ付けによる管理
リソースにタグを付与することで、プロジェクト単位や部門単位でのコスト管理が容易になります。「プロジェクト名」「環境(本番・開発)」「担当者」「利用期限」などのタグを統一ルールで設定し、組織全体で運用します。これにより、どのプロジェクトがどれだけのコストを使用しているか把握でき、不要なリソースの特定も迅速に行えます。
自動停止・削除の仕組み
開発環境のリソースは、業務時間外に自動停止する仕組みを導入することでコスト削減につながります。多くのクラウドサービスにはスケジュール機能があり、平日の業務時間のみ稼働させる設定が有効です。また、一定期間使用されていないリソースを自動的に削除する仕組みを導入することで、放置されたリソースによるコスト増加を防げます。
セキュリティ対策の強化
セキュリティインシデントによる不正利用の防止には、アクセスキーやパスワードの適切な管理を徹底し、不要なキーは削除、定期的な更新を行うことが基本です。
多要素認証(MFA)の導入や、リソース操作に承認フローを設けることで、不正な操作を防止できます。また、管理者権限を持つアカウントは最小限に絞り、権限の付与は必要最低限にとどめることが重要です。
さらに、OSやミドルウェアへの最新パッチ適用と、監視サービスによる異常検知の仕組みを整備することで、脆弱性を突かれるリスクを軽減し、不正利用の早期発見につなげます。
クラウド破産を防ぐ導入・運用で注意すべきポイント
クラウド破産を防ぐには、導入段階からの適切な準備と体制整備が欠かせません。ここでは、導入・運用設計で押さえるべきポイントを解説します。
料金体系の理解
各クラウドサービスの料金体系は複雑で、サービスごとに課金方式が異なります。導入前に、ストレージやデータ転送、各種オプション機能などの料金を詳細に確認しましょう。事前にコスト試算を行うことで、想定外のコスト増に備えることができます。
ただし、外資系クラウドサービスでは料金が外貨建てで設定されているため、為替変動によってコスト予測が難しくなるという課題があります。
国産クラウドであれば円建て料金で利用でき、為替リスクを回避して中長期的なコスト見通しや予算管理を行えます。経営判断や費用計画を安定的に行ううえでも有効な選択肢といえます。
国産クラウドについて詳しくはこちら
運用体制の整備
クラウド運用では、責任範囲と役割分担を明確にすることが重要です。
コスト管理の責任者を定めたうえで、リソースの承認フローや定期的なコストレビューの仕組みを整えましょう。
コストレビューでは、予算との差異を把握し、コスト増加の要因を特定します。その結果を関係者間で共有し、継続的な改善につなげる流れをつくることが大切です。
想定外のコストが発生した際に迅速に対応できるよう、緊急時の連絡体制や対応手順をあらかじめ整えておくことも有効です。
社内教育の徹底
クラウドサービスを利用する担当者に対して、基本的な知識教育を実施することも欠かせません。料金の仕組み、主要なコスト要因、リソースの適切な起動・停止方法などを理解させることで、設定ミスや無駄な稼働を防止します。
まとめ
クラウド破産は、従量課金制の特性や為替変動、設定ミス、セキュリティインシデントなど、さまざまな要因によって発生します。しかし、予算アラートの設定やリソースの可視化などの適切な対策と体制次第で、クラウド破産のリスクは軽減できるでしょう。
また、コストを左右する要因として、為替変動の影響も無視できません。
近年は円安が進行しており、外資系クラウドサービスではコスト予測が難しくなる傾向があります。
こうしたリスクを避け、安定したコスト管理を実現する選択肢として、円建て料金で利用できる国産クラウドの活用が有効です。
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