オブジェクトストレージとは?ほかのストレージとの違いやメリット、活用例を解説

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クラウド時代のデータ管理に欠かせないストレージ技術「オブジェクトストレージ」は、従来のファイルストレージやブロックストレージとは異なる特性を持ち、大容量データの効率的な管理を可能にします。本記事では、オブジェクトストレージの基礎知識から、従来のストレージとの違い、活用のメリット、特性を生かした活用分野まで、IT担当者が知っておくべき情報を幅広く解説します。

目次
  1. オブジェクトストレージとは
    1. オブジェクトストレージの基礎知識
    2. オブジェクトストレージの注目される背景
  2. オブジェクトストレージとファイルストレージ・ブロックストレージの違い
    1. ファイルストレージ、ブロックストレージとは
    2. オブジェクトストレージとファイルストレージの違い
    3. オブジェクトストレージとブロックストレージの違い
  3. オブジェクトストレージのメリット
    1. 無制限のスケーラビリティ
    2. 高い耐久性と可用性
    3. ストレージ管理コストの低減
    4. メタデータによる強力なデータ管理
    5. 標準APIによる柔軟なシステム連携
  4. オブジェクトストレージの具体的な活用分野
    1. データの長期保存
    2. リッチメディアの配信・管理
    3. ビッグデータの保存・分析
    4. クラウドネイティブアプリケーション
    5. IoTデータの保存・活用
  5. まとめ

オブジェクトストレージとは

まずは、オブジェクトストレージの基礎知識や注目される背景について解説します。

オブジェクトストレージの基礎知識

オブジェクトストレージは、データを「オブジェクト」単位で管理するストレージ方式です。従来の階層的なディレクトリ構造ではなく、フラットな構造でデータを保存します。Amazon S3の登場で広く認知されるようになり、いまでは、多くのクラウドストレージの中核的な存在となりました。

クラウドストレージサービスについては、以下の記事で詳しく解説しています。

大量の非構造化データ(画像、動画、音声など)を効率的に扱える特徴があり、各オブジェクトは次の3要素で構成されます。

  • データ本体:画像・動画・ドキュメント・ログなどの保存対象データ
  • メタデータ:作成日時、サイズ、タイプ、カスタム属性などの付加情報
  • 一意の識別子:オブジェクトを識別するユニークなID(パスのような形式)

データアクセスは、REST APIを通じておこなうため、さまざまなアプリケーションやサービスと連携しやすいという特徴もあります。とくにWebアプリやクラウドネイティブ環境との相性に優れているとされています。

クラウドネイティブについては、以下の記事で詳しく解説しています。

オブジェクトストレージの注目される背景

データ量が爆発的に増加するなか、これらを効率的に管理できるオブジェクトストレージの重要性が高まっています。

また、クラウドネイティブなアプリケーション開発の普及により、REST APIでアクセスできるオブジェクトストレージは、新しいシステム設計・構成との親和性が高く、システム連携が容易です。デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業にとっては、重要な技術基盤となります。

オブジェクトストレージとファイルストレージ・ブロックストレージの違い

ストレージの種類には、オブジェクトストレージ以外にも、ファイルストレージ、ブロックストレージがあり、オブジェクトストレージと異なる特徴を持ちます。オブジェクトストレージとの違いとともに解説します。

ファイルストレージ、ブロックストレージとは

ファイルストレージ

ファイルストレージは、データをファイルとして階層的なディレクトリ構造で管理します。NASなどで実現され、ディレクトリ階層でデータを整理し人間が理解しやすいのが特徴です。しかし、ファイル数が膨大になると検索やアクセスのパフォーマンスが低下する課題があります。一般的なオフィス業務やファイル共有に広く利用されています。

ブロックストレージ

データを固定サイズのブロックに分割して管理するストレージ方式です。各ブロックには一意のアドレスが割りあてられ、SANやRAIDなどの技術で実装されます。高速なデータアクセスが特徴で、データベースやトランザクション処理など低レイテンシが求められるワークロードに適しています。

オブジェクトストレージとファイルストレージの違い

ファイルストレージは、オブジェクトストレージと異なり、ファイル名やシンプルな作成日時などの限定的な基本情報のみを扱い、専用プロトコルによるアクセスが必要です。一方、オブジェクトストレージは、豊富なメタデータを追加でき、Web経由で世界中からデータを柔軟に利用することが可能です。

オブジェクトストレージとブロックストレージの違い

ブロックストレージは、データを小さな「ブロック」に分割して管理し、一部分だけを高速に更新できるため、データベースや仮想マシンなど頻繁な読み書きが必要なシステムに適しています。一方、オブジェクトストレージはデータを「オブジェクト」単位で管理します。変更時はオブジェクト全体を置き換える必要がありますが、大量データの効率的な保存と取得に優れており、低コストで無制限に近い拡張性を持つことが特徴です。また、ブロックストレージが複雑なOSレベルの管理を必要とするのに対し、オブジェクトストレージはシンプルなAPIで利用でき、管理が容易である点も大きな違いといえます。

比較項目ファイルストレージブロックストレージオブジェクトストレージ
構造階層構造(フォルダ/ディレクトリ)ブロック単位で分割フラット構造
識別方法パス(/cloud/sakura.pdfなど)ブロックアドレス一意のID/URI
アクセス方法ファイルシステム経由(SMB/NFS等)OSレベルのディスクアクセスREST API経由
メタデータ基本的なファイル属性のみほぼなし豊富なカスタムメタデータ
スケーラビリティ階層が深くなるほど効率が低下中程度高い(ほぼ無制限)
更新方法ファイルの一部を更新可能ブロック単位で更新可能基本的にオブジェクト全体を置換
代表例Windows共有フォルダ、NAS、SambaSAN、ローカルディスク、EBSAmazon S3、Google Cloud Storage、Azure Blob Storage、さくらのクラウド

オブジェクトストレージのメリット

オブジェクトストレージは多くのビジネスシーンで価値を発揮します。主なメリットは以下のとおりです。

無制限のスケーラビリティ

オブジェクトストレージは、高いスケーラビリティを備えています。必要なだけ容量を使用できるため、データ増加を気にせずシステム設計をおこなうことが可能です。

スケーラビリティについては、以下の記事で詳しく解説しています。

高い耐久性と可用性

データは自動的に複数のサーバーや地域に複製され、障害発生時にも高い可用性が確保されます。また、エラー検出機能によって、データの整合性がつねに維持されるため、ビジネスの継続性が向上し、重要なデータの損失リスクを低減できます。

ストレージ管理コストの低減

クラウドベースのオブジェクトストレージでは、物理インフラの管理や保守、容量計画などの負担がなくなり、運用コストを大幅に削減できます。また、従量課金モデルにより、実際に使用した分だけ支払う効率的な投資が可能です。

メタデータによる強力なデータ管理

カスタムメタデータを活用することで、データの検索や分類が容易になります。ビジネス要件に合わせた独自の属性を定義でき、情報管理の効率化やデータガバナンスの強化につながります。

標準APIによる柔軟なシステム連携

標準APIにより、さまざまなプラットフォームからシームレスにアクセスできます。アプリケーションとの統合も容易で、開発効率の向上も期待されます。

オブジェクトストレージの具体的な活用分野

オブジェクトストレージは、その特性を生かし、さまざまな分野で活用されています。代表的な事例を紹介します。

データの長期保存

耐久性とコスト効率の高さは、データの長期保存に適しており、従来のテープバックアップに代わる選択肢として採用されています。多くの組織では、コンプライアンスや法的要件のために長期間のデータ保存が必要です。オブジェクトストレージの「オブジェクトロック」機能を使用すれば、特定の期間データの変更や削除を防止することができ、WORM(Write Once, Read Many)要件にも対応可能です。

リッチメディアの配信・管理

画像や動画、音声といったリッチメディアコンテンツの増加により、メディア業界やコンテンツ配信事業者にとって、メディア資産の管理が大きな課題となっています。

オブジェクトストレージは、こうした膨大なデータを効率的に保存・整理できるほか、メタデータを活用した検索性の向上や、CDNとの連携によるグローバルな高速配信も可能です。ユーザーの近くから安定して配信できる点は、優れたユーザー体験の提供につながるでしょう。

ビッグデータの保存・分析

ビッグデータの保存や分析は、オブジェクトストレージの強みを最大限に生かせる領域のひとつです。膨大な構造化・非構造化データを一元管理できる点と、無制限の拡張性によって、急増するデータ量にも柔軟に対応が可能です。また、生データを原形のまま保存できるだけでなく、豊富なメタデータ機能によってデータの検索・分類が容易です。

Hadoop、Spark、Prestoといった分析ツールとの親和性も高く、データサイエンティストが多様なデータソースから価値ある分析結果を導き出す基盤として機能しています。

ビッグデータ分析については、以下の記事で詳しく解説しています。

クラウドネイティブアプリケーション

マイクロサービスやコンテナベースのクラウドネイティブアプリケーションでは、状態を持たない(ステートレス)設計が理想とされています。オブジェクトストレージは標準API経由でアクセスできるため、こうしたアーキテクチャとの相性がよく、アプリケーションの永続化層として利用されています。

IoTデータの保存・活用

センサーやカメラから常時生成されるIoTデータの保存・活用にもオブジェクトストレージは適しています。時系列データの効率的な管理や、メタデータを活用したデータの整理が可能です。

たとえば、農業分野では気象センサーや作物モニタリングカメラのデータを保存・分析に、スマートシティ分野では交通センサーや監視カメラのデータ管理に利用されています。

まとめ

オブジェクトストレージは、クラウド時代のデータ管理に欠かせない技術として、多くの企業や組織で注目されています。データ量の爆発的増加に対応しながらコスト効率も高めたい企業にとって、有力な選択肢になるでしょう。

さくらインターネットでは、オブジェクトストレージをはじめとするクラウドサービスの導入・活用についてのご相談を承っております。データ管理の効率化やコスト削減にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

さくらのクラウドチーム
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さくらのクラウドチーム

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