企業のデータ管理で欠かせない存在となっているのがクラウドストレージです。「サーバー管理の手間を減らしたい」、「社外からもデータにアクセスしたい」、「災害時のデータ保護が不安」など、従来のファイルサーバーでは解決できない課題を抱えていないでしょうか。

この記事では、クラウドストレージの概要や種類について、IT担当者や経営者の視点でわかりやすく解説します。

クラウドストレージとは

クラウドストレージとは、インターネットを通じてデータを保存・共有できるオンラインのストレージサービスです。

代表的なサービスとして、Amazon S3やGoogle Cloud Storageがあります。とくに大規模なデータ管理に優れており、動画配信サービスのコンテンツ保管や、IoTセンサーから収集される大量のデータ保存などのビジネス用途で活用されています。

データは複製されて複数のデータセンターに自動的に保管されるため、可用性が担保されます。また、APIを通じた開発者向けの機能も充実しており、さまざまなアプリケーションやシステムと連携できます。

クラウドストレージの種類

クラウドストレージは、以下の3つに分類されます。

  • オブジェクトストレージ
  • ファイルストレージ
  • ブロックストレージ

それぞれのストレージタイプはデータをクラウド上で保存することが目的である点では共通していますが、データの管理方式には大きな違いがあります。オブジェクトストレージには高額なコストをかけずにスケールアウトできるというメリットがある一方、ファイルストレージにはフォルダレベルでアクセス権を設定できるというメリットがあります。

このように、それぞれメリット・デメリットが異なるため、特徴を理解したうえで自社に合ったものを導入しましょう。

オブジェクトストレージ

オブジェクトストレージは、データを「オブジェクト」という単位で管理するストレージ方式です。プールやバケットと呼ばれる大規模な記憶領域に、オブジェクトを保存します。

各オブジェクトには、ファイルパスやサイズ、作成日時、保存期間、コピー回数などの属性情報も、メタデータとしてあわせて管理しています。

データへのアクセスはおもにHTTP/HTTPSプロトコルを利用し、REST APIを通じておこないます。

オブジェクトストレージのメリット・デメリット

オブジェクトストレージのメリット・デメリットを以下にまとめました。

メリット デメリット
  • 高額なコストをかけずに、スケールアウトできる
  • ベンダーロックインに陥りにくい
  • 非構造化データを見つけやすい
  • 複数の場所に分散して保存できる
  • 変更の頻度が高い場合には非効率

オブジェクトストレージには、優れたスケーラビリティを持ち、必要に応じて保存容量を柔軟に追加できる特徴があります。物理的なインフラを肥大化させる必要がないため、管理コストの大幅な削減が可能です。また、サーバーを介さない構造のため、特定のベンダーへの依存度が低く、ベンダーロックインのリスクを最小限に抑えられます。

データ量が増加しても検索性能は低下しにくく、非構造化データの検索が容易です。さらに、データを複数の場所に分散して保存できる特性により、高い冗長性を確保できます。

しかし、変更をサポートしていないというデメリットもあります。データを変更する際にはオブジェクト全体を書き換える必要があり、ファイルストレージやブロックストレージと比べると、処理に時間がかかってしまうのです。

このような特徴から、頻繁な更新が必要ないバックアップデータの保管や、大容量の配信用静的コンテンツの保存などに向いています。

代表的なオブジェクトストレージサービス

代表的なオブジェクトストレージサービスとして、以下のものが挙げられます。

サービス名 サービスの概要
Amazon S3 99.999999999%の耐久性と99.9%の可用性を実現する業界標準のサービス
Google Cloud Storage ビッグデータ分析やAI、予測分析などさまざまなユースケースに対応できるサービス
Azure Blob Storage データレイクやアーカイブなどさまざまな用途に対応し、複数のストレージ層と自動ライフサイクル管理機能を備えたサービス

【参考】Amazon S3Cloud Storage - Google CloudAzure Blob Storage

Amazon S3は、業界をリードするオブジェクトストレージサービスで、99.999999999%の耐久性によって優れたスケーラビリティを実現しています。セキュリティ機能や使いやすい管理ツールも備え、さらにはさまざまなAWSサービスとの連携も可能です。

Google CloudのCloud Storageでは、Standard、Nearline、Coldline、Archiveなどさまざまなストレージクラスが用意されています。BigQueryやVertex AIなどのGoogleの分析・AIツールと簡単に連携できる柔軟性が魅力です。

Azure Blob Storageは、高度なセキュリティと自動ライフサイクル管理機能を備え、データの利用頻度に応じて4つのストレージ層から選択できます。geoレプリケーション機能による高い持続性と、柔軟なスケーラビリティが特徴です。

なお、日本語による手厚いサポートを受けたい場合には、日本企業が提供しているサービスの利用がおすすめです。さくらのクラウド「オブジェクトストレージ」は、Amazon S3互換APIを備え、月額495円から利用できる定額従量制の国産ストレージサービスです。日本語サポートが充実しているため、日本企業のデータ管理に適しています。

ファイルストレージ

ファイルストレージは、データを「ファイル」という単位で管理するストレージ方式です。ファイルはディレクトリと呼ばれる箱に格納され、それらが階層的に整理される仕組みになっています。

データへのアクセスは、この階層構造をたどっておこないます。たとえば「文書/●●部/2024年/企画書.doc」というように、一意のパスを指定することでファイルの場所を特定します。また、保存時にはファイル名、作成日時、ファイルサイズ、データ形式といった基本的な属性情報(メタデータ)が自動的に付与されます。

アクセス方法としては、おもにCIFS(SMB)/NFSなどのプロトコルが使用されます。

ファイルストレージのメリット・デメリット

ファイルストレージのメリット・デメリットを以下にまとめました。

メリット デメリット
  • 階層構造でデータを見つけやすい
  • OSと同じ構造のため、馴染みやすい
  • フォルダレベルでアクセス権を設定できる
  • 保存するファイル数が増加すると、処理速度が遅くなる

ファイルストレージのメリットは、階層構造で体系的にデータを分類するため、目的のデータを見つけやすい点です。OSと同じ構造であることから、馴染みがあり使いやすいと感じる方も多いでしょう。さらに、フォルダごとにアクセスできる人を制限可能で、データ漏洩のリスクを抑えられます。

一方、デメリットは保存するファイル数が増加すると処理速度が遅くなる点です。このことから、階層構造でデータを管理したい場合や、社内の文書にアクセス権限を設定して管理したい場合に向いています。

代表的なファイルストレージサービス

代表的なファイルストレージサービスとして、以下のものが挙げられます。

サービス名 サービスの概要
Amazon EFS ファイルの追加や削除に応じて、自動でスケールアップ・ダウンするサービス
Azure Files SMBとNFSプロトコルに対応し、クラウドとオンプレミスから同時にアクセスできるサービス
NFS
(さくらのクラウド)
コントロールパネルから簡単にファイルサーバーを構築できて、複数サーバーで利用可能なサービス

【参考】Amazon EFSAzure FilesNFS(さくらのクラウド)

Amazon EFSは、プロビジョニングや管理が不要で、使用量に応じて自動的にスケールするサービスです。99.999999999%の耐久性を備え、コスト最適化のための自動ライフサイクル管理機能により、TCO(Total Cost of Ownership、総保有コスト)を大幅に削減できます。

Azure Filesは、業界標準のSMBとNFSプロトコルを介してアクセスできるサービスです。Windows、Linux、macOSからアクセスでき、Azure File Syncを使用することで、Windowsサーバーにデータをキャッシュすることも可能です。

さくらのクラウドNFSは、コントロールパネルの簡単な操作でファイルサーバーを構築できる、NFSプロトコル対応のサービスです。複数のサーバーからアクセスでき、HDDとSSDの2つのプランから選択できます。

ブロックストレージ

ブロックストレージは、データを固定サイズのブロックに分割して管理するストレージ方式です。

データの保存には、ユーザーの要求する容量に応じて必要なブロックリソースが確保され、各ボリュームとブロックには一意の識別子が割り当てられます。保存するデータがブロックのサイズを超える場合には、複数のブロックにまたがって保存することが可能です。

アクセス方法としては、おもにiSCSIやFibre Channelといったプロトコルが使用されます。

ブロックストレージのメリット・デメリット

ブロックストレージのメリット・デメリットを以下にまとめました。

メリット デメリット
  • 読み取り・書き込み速度が速い
  • 拡張性が高い
  • 管理と維持に多くの費用がかかる
  • メタデータを付与できない

ブロックストレージは、階層を利用せずに直接データにアクセスできるため、高速な読み取りや書き込みを実現しています。また、必要に応じてブロックを追加するだけで容易に拡張できる点もメリットです。

その反面、管理と維持には多くの費用がかかるというデメリットがあります。拡張した部分を使用しなくても、割り当てられたすべての保存容量に対して費用が発生します。さらに、メタデータが付与されないことから、テキストや画像、音声などの非構造化データの管理には向いていません。

これらの特徴から、データベースやトランザクションデータなど、頻繁に更新する必要のあるデータの保存におすすめです。

代表的なブロックストレージサービス

代表的なブロックストレージサービスとして、以下のものが挙げられます。

サービス名 サービスの概要
Amazon Elastic Block Store
(Amazon EBS)
ビッグデータ分析やミッションクリティカルなアプリケーションなど、高いI/Oパフォーマンスを必要とするワークロードに最適なサービス
Azure Managed Disks Azure VMで使用する高可用性と持続性を備えた、ブロックレベルストレージサービス
Persistent Disk 自動的なデータ暗号化と冗長化により、高い耐久性とセキュリティを実現したサービス

【参考】Amazon Elastic Block StoreAzure Managed DisksPersistent Disk

Amazon EBSは、Amazon EC2向けに設計されたサービスで、99.999%の耐久性とAZ内でのレプリケーションによる高可用性を提供します。データベースやミッションクリティカルなアプリケーションに最適で、ワークロードに応じて最適なストレージタイプを選択することが可能です。

Azure Managed Disksは、99.999%の可用性を実現する、仮想マシンのブロックレベルストレージサービスです。Ultra Disks、Premium SSD、Standard SSD、Standard HDDなど、さまざまなディスクタイプから選択でき、ユーザーはサイズと種類を指定するだけで、残りの管理はAzureによっておこなわれます。

Google CloudのPersistent Diskは、データを自動的に冗長化して保存するため、予期せぬ障害によってデータが失われる心配はありません。さらに、データはつねにシステム定義の暗号鍵または顧客指定の暗号鍵で暗号化された状態となっており、高いセキュリティを確保しています。

まとめ

クラウドストレージは、インターネットを通じてデータを保存・共有できるサービスとして、企業のデジタル化に欠かせないものとなっています。導入により、場所を問わないアクセス性、効率的なデータ共有、自動バックアップによるデータ保護、そしてコスト最適化といったメリットが得られます。

さくらのクラウド「オブジェクトストレージ」は、日本企業におすすめのサービスです。東京と石狩の2拠点でデータを管理しており、データの所在地を明確に把握できることも特長です。

また、データ転送量無料のため予期せぬ費用発生を防げます。シンプルな料金体系なので、コスト管理も容易です。システム面では、業界デファクトスタンダードのAmazon S3互換APIに対応しており、既存システムとの連携を可能にしています。

構成・執筆・編集

さくらのクラウドチーム

コラムでは、さくらのクラウドに関連するビジネス向けの内容や、ITインフラ技術の説明などを掲載しています。

2024年12月26日公開