コンテナとは?クラウドでの活用メリット・デメリット、導入時のポイントを解説

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コンテナとは?クラウドでの活用メリット・デメリット、導入時のポイントを解説

クラウド環境でのアプリケーション開発・運用において、コンテナの活用が急速に広がっています。従来の仮想マシンと比較して、より軽量で高速、そして柔軟な開発環境を実現できるコンテナは、現代のクラウド活用で重要な選択肢となっています。

しかし、初めてコンテナ技術を検討する際には、仮想マシンとの違いや自社に適しているかどうかの判断が難しいものです。

本記事では、クラウド環境でのコンテナ技術の基本から、メリット・デメリット、そして実際の導入時に押さえるべき注意点までを幅広く解説します。

この記事でわかること
  • コンテナとは?
  • コンテナをクラウド環境で活用するメリット・デメリット
  • クラウドにおけるコンテナ導入で押さえるべきポイント
目次
  1. クラウドにおけるコンテナとは
    1. コンテナと仮想マシン(VM)の違い
  2. コンテナをクラウド環境で活用するメリット
    1. 開発・運用のスピード向上
    2. 処理速度が速い
    3. リソース効率の向上
  3. コンテナをクラウド環境で活用するデメリット
    1. 異なるOS向けシステムを動かせない
    2. ホストOS共有によるセキュリティリスクが高まる
    3. 学習コストがかかる
  4. クラウドにおけるコンテナ導入で押さえるべきポイント
    1. 導入目的の明確化
    2. 計画的なスキル習得
    3. コンテナ管理ツールの活用
    4. セキュリティ・ガバナンスの適切な設計
  5. まとめ

クラウドにおけるコンテナとは

コンテナとは、アプリケーションとその実行に必要なライブラリやミドルウェアなどの依存関係をひとつのパッケージにまとめて、どの環境でも同じように動作させる技術です。

クラウド環境でコンテナを活用することで、開発環境から本番環境への移行がスムーズになり、効率的なインフラ管理が可能です。

これまでクラウド環境で一般的だった仮想マシン(VM)に代わる新たな選択肢として注目されており、より軽量で起動が速く、柔軟な運用が可能なことから、開発現場での採用が急速に広がっています。

コンテナに関する代表的なツールには、次のようなものがあります。

  • Docker(ドッカー):アプリケーションと必要なライブラリをひとつにまとめてコンテナ化するツール
  • Kubernetes(クバネティス):多数のコンテナを効率的に管理・運用するためのプラットフォーム

現在では、主要なクラウド事業者がこれらの技術を取り入れたマネージドサービスを提供しています。インフラ管理の負担を軽減しながら、アプリケーション開発に注力できる環境が整いつつあります。

コンテナと仮想マシン(VM)の違い

仮想マシンは、1台の物理マシンを仮想化ソフトウェア(ハイパーバイザー)で区切り、それぞれの領域に独立したOSをインストールして複数のサーバーとして稼働させる技術です。各仮想マシンには完全なOS(ゲストOS)が搭載されており、それぞれが独立したサーバーとして動作します。

仮想マシンやハイパーバイザーについて詳しくはこちら

一方、コンテナは、物理マシンで動いているOS(ホストOS)を土台にして、その上にアプリケーション実行に必要なライブラリやコマンドだけをまとめた、軽量な実行環境を構築する技術です。コンテナ内にはOSがインストールされておらず、ホストOSを共有して動作します。

コンテナをクラウド環境で活用するメリット

クラウド環境でコンテナを活用することで、次のようなメリットが得られます。

開発・運用のスピード向上

開発から本番環境へのデプロイまでのスピードを大幅に向上させることが可能です。アプリケーションの依存関係をパッケージ化するため、開発環境、テスト環境、本番環境のどこでも同じように動作します。「開発では動いたのに本番で動かない」といった環境差異によるトラブルの削減につながります。

処理速度が速い

仮想マシンが起動に数分かかるのに対し、コンテナは数秒で起動できます。

急激なアクセスの増加にも、自動スケーリング機能を活用することで、瞬時にスケールアウトが可能です。OSのカーネル(OSの中核部分)を共有する仕組みのため、オーバーヘッド(処理負荷)が少なく、アプリケーション本来のパフォーマンスを引き出しやすい特徴があります。

障害発生時も、問題のあるコンテナを停止し、新しいコンテナを起動するまでの時間が短いため、サービスのダウンタイムを最小限に抑えられます。

スケーリングについて詳しくはこちら

リソース効率の向上

コンテナはゲストOSを持たず、必要最小限のリソースで動作するため、同じハードウェア上でより多くのアプリケーションを実行できます。仮想マシンでは各仮想マシンにゲストOSが必要なため数GBのメモリを消費しますが、コンテナはOSを共有することでその分のリソースを節約できます。

コンテナをクラウド環境で活用するデメリット

コンテナには多くのメリットがありますが、導入前に把握しておくべき制約や課題も存在します。ここでは、とくに注意が必要な点を整理します。

異なるOS向けシステムを動かせない

コンテナはホストOSのカーネルを共有して動作するため、異なるOS向けのアプリケーションは実行できません。たとえば、LinuxホストOS上ではWindowsアプリケーションを実行できず、その逆も同様です。

また、コンテナごとに独自にカーネルを変更・カスタマイズすることもできません。

ホストOS共有によるセキュリティリスクが高まる

コンテナは、従来の物理サーバー環境と比べてプロセス間の分離が強化されています。アプリケーションレベルでのセキュリティは向上しているといえるでしょう。 

しかし、ホストOSを共有する仕組みのため、仮想マシンのように完全な隔離は確保されません。ホストOSにセキュリティ上の脆弱性が発見された場合、同じホスト上で動作するすべてのコンテナが影響を受ける可能性があります。また、1台のコンテナが侵害された際に、ホストやほかのコンテナへ影響が及ぶリスクも考えられます。 このように、コンテナと仮想マシンでは、セキュリティに関して異なる注意点があります。適切な設定・運用を行うことが不可欠です。

学習コストがかかる

コンテナ技術を習得するには、新しい概念、ツールや仕組みを学ばなければなりません。初めてコンテナ導入に取り組むチームにとっては学習コストが発生します。適切なスキルを持つ人材の確保や育成を計画的に進める必要があります。

クラウドにおけるコンテナ導入で押さえるべきポイント

クラウド利用においてコンテナを導入する際には、押さえておくべきポイントがあります。ここでは、導入を成功させるための重要な注意点について解説します。

導入目的の明確化

まず、コンテナ導入の目的を明確にすることが重要です。開発スピードの向上やコスト削減など、解決したい課題を具体的に定義しましょう。
目的があいまいなまま導入を進めると、運用の複雑さばかりが増し、期待した効果を得られないことがあります。そもそもコンテナ導入が適切な解決策でない場合もあります。

コンテナはあくまで手段であり、導入ありきで議論を進めるのではなく、現状の課題に対して有効な方法かどうかを見極めることが大切です。

計画的なスキル習得

コンテナの運用には、従来の仮想サーバー管理とは異なる新たな知識やスキルが求められます。

導入前に十分な学習期間を確保し、チーム全体でスキルを底上げする計画を立てることが重要です。

社内に経験者がいない場合は、外部の専門家によるコンサルティングやトレーニングの活用、あるいは経験者の採用も有効な手段です。

コンテナ管理ツールの活用

コンテナ運用を効率化するには、主要クラウド事業者が提供するマネージドサービスを活用するのが効果的です。
マネージドサービスとは、インフラの構築や保守などの管理業務をクラウド事業者が代行する仕組みで、利用者はアプリケーション開発や運用に集中できます。

代表的なサービスには、以下のようなものがあります。

  • Amazon Elastic Container Service(ECS)
  • Amazon Elastic Kubernetes Service(EKS)
  • Azure Kubernetes Service(AKS)
  • Google Kubernetes Engine(GKE)

これらのツールでは、コンテナの起動・停止・監視などを直感的な管理画面から操作可能で、スキル習得と並行して計画的に導入を進めることが推奨されます。

セキュリティ・ガバナンスの適切な設計

コンテナには従来の環境とは異なるセキュリティリスクが存在するため、コンテナ特有の対策が必要です。イメージの脆弱性スキャン、アクセス制御、ネットワーク分離、ログ監視など、複数のセキュリティ対策を組み合わせて設計しましょう。

さらに、コンテナの作成・デプロイ権限や承認フローなどのガバナンスルールを明確に定めることも欠かせません。

ルールがあいまいなままコンテナが増えると、管理が煩雑化し、セキュリティリスクやコスト増大の要因となります。導入初期から、統制の取れた運用体制を確立することが成功を左右します。

まとめ

コンテナは、開発スピードの向上、処理速度の高速化、リソース効率の改善といった多くのメリットをもたらすことから、仮想マシンに代わる技術として注目されています。一方で、ホストOSを共有する仕組みにより、セキュリティリスクが高まる場合や、運用面での課題も存在します。
まずはコンテナの仕組みや特徴を正しく理解し、自社のシステムや運用体制にどのように適用できるかを検討することが重要です。
そのうえで、適切なツールの活用や人材育成を計画的に進めることで、コンテナの利点を最大限に生かし、自社の開発・運用体制を効率化できるでしょう。

さくらのクラウドでは、コンテナ環境を簡単に構築・運用できるマネージドサービス「AppRun」を提供しています。インフラ管理を意識せず、アプリケーション開発に専念できるため、初めてのコンテナ導入にも最適です。

コンテナをはじめ、自社に最適なクラウド構成を検討する際は、ぜひお気軽にご相談ください。