クラウドバックアップとは?必要な理由やメリット・デメリットや選び方を解説

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データは、企業にとってもっとも重要な資産のひとつとなっています。しかし、自然災害やシステム障害、サイバー攻撃によって、大切なデータが一瞬にして失われるリスクはつねに存在します。そこで注目されているのが、「クラウドバックアップ」です。本記事では、クラウドバックアップの基礎知識から必要な理由、メリット・デメリット、選び方まで徹底解説します。

目次
  1. クラウドバックアップとは
  2. クラウドバックアップが必要な理由
    1. 災害・物理的障害からのデータ保護
    2. ランサムウェアなどのサイバー攻撃対策
    3. データ喪失リスクの回避
  3. クラウドバックアップのメリット
    1. 運用コストの削減
    2. 管理・運用の手間を軽減
    3. 場所を選ばずデータを保護
    4. スケーラビリティの確保
    5. 強固なセキュリティ
  4. クラウドバックアップのデメリット
    1. インターネット環境への依存
    2. セキュリティリスクの存在
    3. データ転送速度の制限
  5. クラウドバックアップの種類
    1. イメージバックアップ
    2. ファイルバックアップ
  6. クラウドバックアップの選び方
    1. コスト
    2. セキュリティレベル
    3. バックアップの範囲や世代管理
    4. 重複排除機能の有無
    5. 災害対策の充実度
  7. まとめ

クラウドバックアップとは

クラウドバックアップは、インターネットを通じてサービス事業者が提供する仮想ストレージにデータを複製・保管する方法です。

従来のバックアップ方法としては、自社内にサーバーを設置するオンプレミス型や、外付けHDDやNASといった物理メディアを使用するローカルバックアップがありました。しかし、これらの方法では、機器の故障や災害によるデータ消失リスクが高く、また運用管理にも手間とコストがかかるという課題がありました。

一方、クラウドバックアップは、複数拠点のサーバーや遠隔地にデータを保存できるため、トラブル発生時にも復旧しやすく、リスク分散につながる方法です。

クラウドバックアップが必要な理由

クラウドバックアップが必要な理由を3点紹介します。

災害・物理的障害からのデータ保護

HDDのような物理メディアは、落下や衝撃による破損、経年劣化による故障など、つねに機器障害のリスクと隣り合わせです。さらに、日本は地震や台風などの自然災害が多く、南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの大規模災害リスクも指摘されています。

クラウドバックアップでは、地理的に分散した複数のデータセンターにデータを保管するため、局所的な災害による影響を受けにくく、データ消失のリスクを大幅に低減できます。

ランサムウェアなどのサイバー攻撃対策

ランサムウェア攻撃は年々増加しており、あらゆる規模の企業が標的となっています。クラウドバックアップを利用することで、万が一攻撃を受けた場合でも、隔離された安全なバックアップデータから迅速にシステムを復元ができ、企業のサイバーレジリエンス(攻撃からの回復力)を大幅に強化することが可能です。

サーバーレジリエンスについては、以下の記事でくわしく解説しています。

データ喪失リスクの回避

重要なデータの喪失は、事業継続に大きな影響を与えます。顧客情報や取引履歴の消失により、業務停止や社会的信頼の低下を招く可能性があります。クラウドバックアップの利用は、こうしたリスクを低減し、重要なデータを確実に保護できるため、業務継続性の強化につながるでしょう。

クラウドバックアップのメリット

クラウドバックアップには、次のようなメリットがあります。

運用コストの削減

クラウドバックアップの導入により、自社で物理サーバーを保有・運用する必要がなくなり、設備投資や電気代を含む運用コストを削減できます。さらに、バックアップ管理をサービス事業者に任せられるため、専門スタッフの人件費も抑えられます。また、ストレージの拡張も柔軟に対応でき、必要な分だけ支払う形で、事業規模に応じた無駄のないコスト管理が可能です。

管理・運用の手間を軽減

サービス事業者が一括して管理・運用を提供するため、IT部門の業務負担を大幅に削減することが可能です。事前に設定した範囲と時間に従った自動的なバックアップにより、手動操作や日々の監視作業から解放されます。これにより、IT担当者はより戦略的な業務に集中できるでしょう。

場所を選ばずデータを保護

社外PCやモバイル端末のデータも保護することが可能です。インターネット接続があれば基本的には場所を問わずデータを保護できるため、リモートワークが増加した現代のビジネス環境に最適です。ただし、通信環境の品質に依存するため、安定した接続が必要です。また、セキュリティ要件(VPN接続や暗号化など)により一部制限が生じる場合もあります。

スケーラビリティの確保

ビジネスの成長に合わせて、柔軟にストレージ容量を調整できます。容量無制限のクラウドストレージを提供しているサービスもあり、将来的な拡張性を心配する必要がありません。

スケーラビリティについては、以下の記事でくわしく解説しています。

強固なセキュリティ

多くのサービスでは、データの暗号化、アクセス制御、定期的なセキュリティアップデートなどの専門的な対策が施されています。さらに、ほとんどのデータセンターは、免震構造や自家発電などの災害対策が充実しており、強固なセキュリティでデータを保護できます。

クラウドのセキュリティについては、以下の記事でくわしく解説しています。

クラウドバックアップのデメリット

クラウドバックアップには多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。

インターネット環境への依存

データを保管する仮想サーバーはクラウド上にあるため、インターネット環境がない場合は、データの確認や上書きができません。ネットワーク障害やオフライン環境では、必要な操作が制限され、業務に支障をきたすおそれがあります。

仮想サーバーについては、以下の記事でくわしく解説しています。

セキュリティリスクの存在

クラウドバックアップでは、セキュリティ対策をサービス事業者に任せることになります。どの事業者もセキュリティレベルの高さをアピールしていますが、自社独自のセキュリティ要件や規制に完全に対応できない可能性があります。

データ転送速度の制限

大量のデータを初めてバックアップしたり復元したりする際には、インターネット回線の速度によって時間がかかる場合があります。とくに、動画ファイルなど大容量データを扱う業種では、初期バックアップに数日を要することもあります。また、大規模な復元作業をおこなう場合も、データ転送に時間がかかり、システム復旧の遅延につながる可能性があります。

クラウドバックアップの種類

クラウドバックアップには主に2種類あります。それぞれの特徴を理解し、適切に選択することが重要です。

イメージバックアップ

イメージバックアップは、システム全体のスナップショットを取得するバックアップ方式です。OSやアプリケーションを含むシステム全体を丸ごとバックアップするため、障害発生時に素早く元の状態に復元できます。重要なサーバー環境や業務用PCのバックアップに適しており、災害復旧計画の一環として多くの企業に採用されています。

ただし、保存にはファイルバックアップよりも多くのストレージ容量が必要となり、コスト面での考慮が必要です。

ファイルバックアップ

ファイルバックアップは、指定したフォルダやファイルのみをバックアップする方式です。ドキュメントやスプレッドシートなど業務上重要なデータに焦点をあて、必要なファイルだけを効率的に保護します。個別ファイルの復元が容易で、ストレージ容量を節約できるため、日常的なデータ保護やコスト効率を重視する場合に適しています。ただし、システム障害時には環境の再構築が別途必要となるため、完全復旧までの時間は長くなる可能性があります。

クラウドバックアップの選び方

クラウドバックアップサービスを選ぶ際は、自社のニーズに合った適切なサービスを選定することが重要です。ここでは、サービス選定のポイントについて解説します。

コスト

サービス利用に必要なコストは、各社によって大きく異なります。コストの幅が広いのは、バックアップデータ量や保持する世代数、利用する機能などが、サービスや利用者によって大きく異なるためです。自社のニーズに合わせてサービス内容を選ぶことで、コストを最適化することができます。初期費用だけでなく、データ量の増加に伴う将来的なコスト変動も考慮して検討することが大切です。

セキュリティレベル

自社が想定する対策、またはそれ以上のセキュリティレベルでサービスが提供されているかを確認する必要があります。自社が厳格なセキュリティポリシーのもと運用している場合は、とくに注意が必要です。データの暗号化方式やアクセス制御機能、第三者による認証取得状況などを十分にチェックしましょう。

バックアップの範囲や世代管理

企業の安定した事業継続には、WordやExcelなどのファイル資料に留まらず、アプリケーション、ユーザーアカウント、ユーザー設定など、OSを含むシステム全体に至るまで、幅広いデータ(システム構成)の維持が不可欠です。また、どれだけの期間や世代数のバックアップを保持できるかも確認しておくことが重要です。

重複排除機能の有無

クラウドバックアップの際に、変更の必要がないデータまで毎回保存すると、限られたストレージ容量やネットワーク帯域幅を無駄に消費してしまいます。重複排除機能は、こうした無駄を防ぎ、同一データを一度だけ保存する機能です。記憶領域を最小限に抑えることができるため、バックアップサービスを選ぶ際は、この機能の有無を確認しましょう。

災害対策の充実度

クラウドバックアップサービスでは、遠方にあるデータセンターでバックアップデータを保管しています。複数のデータセンターでデータを分散管理しているか、データセンター自体の災害対策はどうなっているかなど、事業継続の観点から確認しておきましょう。地理的に離れた場所にデータが保管されていることで、地域的な大規模災害からもデータを守ることができます。

まとめ

クラウドバックアップは、災害やランサムウェアなどの脅威からデータを守るための効果的な方法です。サービスを選ぶ際は、セキュリティレベル、バックアップ範囲、災害対策などを総合的に比較検討し、自社に合ったサービスを選ぶことが重要です。

さくらのクラウドは、データバックアップをはじめ信頼性の高いサービスを兼ね備えたクラウド環境を提供しています。クラウド環境構築にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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