システムの老朽化とは?放置するリスクや解消の手順、ポイントを解説

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多くの企業が長年使い続けてきた基幹システムやITインフラが、近年、大きな岐路に立たされるケースが増えています。「2025年の崖」問題が取り沙汰されるなか、老朽化したシステムの刷新は避けて通れない経営課題です。本記事では、システム老朽化の定義から具体的なリスク、そして刷新に向けた手順、ポイントまでを解説します。

この記事でわかること
  • 老朽化したシステムが引き起こすリスク
  • システム老朽化を解消するステップとポイント
目次
  1. システム老朽化とは
    1. サポート終了あるいは終了が予定されている製品の使用
    2. 保守・運用コストの増加
    3. ビジネス要件との乖離
  2. 老朽化したシステムが引き起こすリスク
    1. セキュリティ脆弱性の拡大
    2. 保守・運用コストの高騰
    3. ビジネス変化への対応遅延
  3. システム老朽化を解消するための手順
    1. 1. 現状分析
    2. 2. 刷新方法の選定
    3. 3. 要件定義
    4. 4. 開発・導入
    5. 5. 効果検証
  4. システム老朽化解消を進める際のポイント
    1. 経営層を巻き込んだ取り組み
    2. ROI(投資対効果)の可視化
    3. 適切なベンダー・システム選定
    4. 適切な移行方法の選択
  5. まとめ

システム老朽化とは

システム老朽化とは、単に稼働年数が長いことを意味するのではなく、現代のビジネス環境や技術標準に対して機能面・運用面で対応が困難になった状態を指します。

老朽化を示す代表的なサインには、以下のようなものがあります。

サポート終了あるいは終了が予定されている製品の使用

OSやミドルウェアなどのベンダーサポートがすでに終了している、あるいは近い将来に終了が予定されている製品を使用している

保守・運用コストの増加

故障やトラブルの発生頻度が上昇し、その解決に要する時間とコストが増大している

ビジネス要件との乖離

モバイル対応やクラウド連携、データ分析、API連携などの新しいビジネス要件に対応できない

老朽化したシステムが引き起こすリスク

システム老朽化を放置することは、企業経営に次のようなリスクをもたらします。

セキュリティ脆弱性の拡大

サポート終了したOS・ミドルウェアはセキュリティパッチが提供されなくなり、新たな脆弱性に対して無防備な状態となります。また、多要素認証や最新の暗号化技術など、現代的なセキュリティ対策を古いシステムに実装することは技術的に困難です。情報漏洩による信頼喪失やランサムウェア被害による業務停止など、企業の存続を脅かすリスクが高まります。

保守・運用コストの高騰

老朽化したシステムはドキュメント不足や担当者の退職により、運用ノウハウが一部のベテラン社員に依存する「属人化」が進行し、事業継続性のリスクとなります。また、古い機器の部品調達が困難になり、修理コストが上昇するとともに、故障頻度の増加により対応コストと業務影響も増大します。

ビジネス変化への対応遅延

レガシーシステムでは、新機能の追加や変更に時間とコストがかかり、ビジネス環境の変化に迅速に対応できません。APIやマイクロサービスなどの現代的な連携機能を持たない場合、SaaS活用やデータ連携の障壁となり、企業全体のDX推進を阻害するでしょう。

システム老朽化を解消するための手順

システム老朽化の解消は一朝一夕では実現できません。以下に、効果的な刷新を実現するための5つのステップを解説します。

1. 現状分析

現行システムの棚卸しをおこない、システムが抱える技術的問題点(以下、技術的負債)の範囲を明確にしましょう。ハードウェア、ソフトウェア、データ資産の状況を詳細に調査し、サポート終了時期や保守コスト推移を可視化します。同時に、現在の業務プロセスとシステムの間にどのようなギャップが生じているかを分析することが重要です。経営層から現場ユーザーまで多角的な視点からの課題収集をおこなうことで、新システムに求められる要件が明確になります。

2. 刷新方法の選定

システム刷新には複数のアプローチがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。フルリプレース(全面刷新)は最新技術の導入が可能ですが、コストと期間がかかります。リエンジニアリングは機能を維持しつつ再構築する方法で、技術的負債を解消できますが、非効率な業務プロセスも継承する可能性があります。マイグレーションは最小限の変更で移行する方法で、コストは低いものの根本的な課題が残ります。ビジネス要件や予算・期間など複数の観点から、自社の状況に適した方法を選択する必要があります。

3. 要件定義

要件定義では、単なる現行機能の踏襲ではなく、将来のビジネス拡大を見据えた設計が重要です。ベンダーへのRFP(提案依頼書)には、依頼の背景・目的、現行課題、機能・非機能要件などを明確に記載します。ベンダー選定にあたっては、技術力や提案内容だけでなく、管理体制やサポート、コストなどを総合的に評価しましょう。

4. 開発・導入

開発・導入フェーズでは、計画的なプロジェクト管理と綿密な準備が不可欠です。まず、詳細な移行計画とマイルストーンごとの成果物と評価基準を明確にします。とくにデータ移行プロセスは、慎重に計画しましょう。

本番移行前には、ユーザー受け入れテストと移行リハーサルを実施し、問題発生時の対応手順も準備します。並行して、従業員向けトレーニングと関連マニュアルを整備し、新システムへの円滑な移行を支援することが重要です。

5. 効果検証

導入後には、継続的な検証と改善が欠かせません。システム性能(レスポンスタイム、処理時間、可用性)、運用効率(障害件数、対応時間、コスト)、ビジネス指標(業務処理時間、エラー率、顧客満足度)などの明確なKPIを設定し、定期的にモニタリングしましょう。効果測定に基づくPDCAサイクルを回すことで、投資価値を最大化し、再び老朽化を招かないための継続的な改善体制を構築します。

システム老朽化解消を進める際のポイント

システム老朽化の解消を成功に導くための4つの重要ポイントを解説します。

経営層を巻き込んだ取り組み

システム刷新の成功には、経営層の理解と支援が不可欠です。経営者が理解しやすい言葉に置き換えながら、将来の生産性低下や機会損失といった経営リスクやコスト削減効果を伝えることが効果的です。たとえば、セキュリティ事故や障害による損害額、競合との差による市場シェアの喪失などを定量的に示すことで、経営層の関心を引きやすくなります。

ROI(投資対効果)の可視化

システム刷新の投資判断には、明確なROI(投資対効果)計算が求められます。保守費削減、障害対応コスト削減、ライセンス費の最適化などの直接的なコスト削減効果をTCO(総所有コスト)比較で示しましょう。さらに、業務効率化による人件費削減、売上増加、新規事業展開などのビジネス価値を具体的な数値で見える化することで、経営層や関係者への説得力が増します。また、刷新後には、定期的に効果を可視化し、継続的な改善を促すことも重要です。

適切なベンダー・システム選定

ベンダー選定は、プロジェクト全体の成功を左右する要素です。過去の実績や提案の具体性、技術力、サポート体制などを総合的に評価しましょう。また、単なる発注先ではなく、ビジネスパートナーとしての相性も重要です。役割分担やリスク共有の考え方、コミュニケーション体制はとくに注視すべきポイントです。

適切な移行方法の選択

システム移行戦略には「段階的移行」と「一括刷新(ビッグバン)」という2つの方法があり、それぞれに長所と短所があります。段階的移行はリスクを分散し、早期に効果が表れる利点がありますが、長期間の並行運用が必要になります。一方、一括刷新は短期間で全体最適化が可能ですが、リスクが集中し、大規模な投資と綿密な準備が必要です。

選択の際は、業務の重要度、システム間の依存関係の複雑さ、組織の変化対応力などを考慮して判断しましょう。

まとめ

システム老朽化は、多くの企業が直面する重大な経営課題ですが、適切な対策を講じることで、リスク回避だけでなく、ビジネス競争力の強化にもつながります。

システム刷新の成功には、現状分析から効果検証までの体系的なアプローチと、経営層の理解・支援を得るための戦略的な取り組みが不可欠です。とくに、ROIの可視化とベンダー選定、適切な移行戦略の選択が成功のポイントとなります。

さくらインターネットでは、システム刷新に関するコンサルティングから設計・構築・運用までのトータルサポートを提供しています。システムの老朽化でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

さくらのクラウドチーム
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