スケーラビリティとは?意味やクラウド利用のメリットをわかりやすく解説

ビジネスの成長に欠かせない「スケーラビリティ」。とくにWebサービスやIoTシステムを運営する企業では、アクセス数の急激な変動への対応が課題となっています。
この記事では、スケーラビリティの基本から解決策まで、実際の企業事例を交えて解説します。システムの拡張性を確保したい経営者の方、インフラ構築の最適化を目指すエンジニアの方はぜひ最後までお読みください。
スケーラビリティとは
スケーラビリティとは、
たとえば、オンラインショップでは季節の売上に合わせてシステムを拡張し、閑散期には縮小することでリソースを最適化した運営が可能になります。
この場合の「スケーラビリティが高い状態」とはユーザーが増えても応答速度が遅くならず、データ量が増加しても処理能力を維持していることです。逆に「スケーラビリティが低い状態」とは、応答速度や処理能力が落ちていることを指します。
昨今ではクラウドサービスの普及により、必要に応じてリソースを追加・削減できる環境が整ってきました。
システムの拡張性が高いと急なニーズ増にも対応でき、安定したサービスを提供し続けられます。事業の成長に合わせて段階的にシステムを拡張できるため、初期投資を抑えることも可能です。
スケーラビリティの重要性
ビジネスの成長において、スケーラビリティは欠かせません。
たとえば、ユーザーが増えたときにシステムが対応できなければ、サービスの品質が低下し、顧客離れを招く可能性があります。また、急劇なニーズの増加に対応できないと、ビジネスチャンスを逃すことにもなるでしょう。
拡張性が低いシステムのままでは、改修に時間とコストがかかり、ビジネスの成長を妨げてしまいます。
とくにデジタル化が進む現代では、オンラインでのサービス提供が一般的となり、アクセス数の急増にも対応する必要があります。グローバルに展開したい企業にとっては、世界中からのアクセスに対応できる拡張性も求められます。
さらに、データ分析やAIの活用が広がる中、処理すべきデータ量も増加の一途をたどっており、それらに対応できるシステムの拡張性も重要になっています。
スケーラビリティのアプローチ方法

システムの拡張性を高めるには、主に2つの方法があります。
「サーバーなどの数を増やす方法」と「個々の機器の性能を上げる」方法です。それぞれの特徴を理解し、目的に応じて適切な方法を選びましょう。
スケールアウト(水平スケーリング)
スケールアウトは、複数のサーバーで処理を分散させる方法です。たとえば、Webサイトへのアクセスが増加した場合、サーバーを追加して負荷を分散させることができます。
スケールアウトのメリットは、システム全体の可用性を高め、一部の障害が全体に影響を与えにくい点です。一方のデメリットは、複数のサーバーを連携させるため、システムの構成が複雑になり、運用管理の手間やコストが増加してしまいます。
具体的な実装では、ロードバランサーを使用して複数のサーバーに処理を振り分けたり、データベースをシャーディングして分散させたりします。
ECサイトの繁忙期やキャンペーン開催時など、一時的なアクセス増加に対応する際に適しているでしょう。
スケールアップ(垂直スケーリング)
スケールアップは、サーバーのCPUやメモリを増強して処理能力を向上させる方法です。システム構成の変更が少なく、データの一貫性を保ちやすいという特徴があります。
たとえば、データベースサーバーの処理が遅くなった場合、より高性能なCPUに換装することで改善できます。小規模なシステムやデータの即時性を求められるシステムで使用されます。
ただし、ハードウェアの制限により無制限な拡張はできず、システムの停止を伴う可能性があることに注意が必要です。
スケーラビリティ向上の実現における課題

スケーラビリティの向上には、技術面や組織面での課題があります。
技術面の課題
- システム構成の複雑化(サーバーやミドルウェアが連携する環境での障害対応)
- データの整合性維持(サーバー間でのデータ同期や整合性の維持)
- 性能ボトルネックの特定(負荷分散やキャッシュの効果が不十分な箇所の発見)
- セキュリティ管理の複雑化(システム規模拡大に伴う脆弱性リスクの増加)
組織面の課題
- 専門人材の確保(クラウドに精通したエンジニアの採用)
- 運用プロセスの見直し(監視体制や障害対応フローの再構築)
- コスト管理の複雑化(動的なリソース変更に伴う予算管理)
システムの規模を拡大する際は、リスクを抑えるために段階的なアプローチが望ましいでしょう。
たとえば、まずは重要な機能に限定して小規模なシステムを構築し、その安定性を確認してから徐々に機能を追加していきます。
また毎月の性能評価では、サーバーの応答時間やメモリ使用率などの指標を確認し、トラブルの兆候を早期に発見することが大切です。
さらに、自動化ツールを活用して定期的なテストを実施することで、安定した運用を実現できます。
スケーラビリティ向上にクラウドを利用するメリット

スケーラビリティ向上にクラウドを使えば、利用状況に応じて自動的にリソースを調整できるため、過剰な投資を避けながら必要な処理能力を確保できます。
専門のエンジニアがいなくても、サービス提供者の知見やノウハウを活用できるため、運用の負担を軽減できるでしょう。
また、初期投資を抑えられることもメリットの一つです。世界中のデータセンターを利用できるため、地理的な制約を受けずに拡張することも容易です。
使った分だけ支払う「従量課金制」なので、コスト効率を高められます。とくにニーズの変動が激しいビジネスでは、クラウドの拡張性がメリットになるでしょう。
セキュリティ面でもサービス提供側の専門家による管理や最新の対策を利用できるため、安全性の向上にもつながります。
スケーラビリティ向上を実現するなら「さくらのクラウド」

「さくらのクラウド」は、仮想サーバー機能とオートスケール機能を組み合わせることで、スケーラビリティの向上を実現します。
仮想サーバーは、1コア1GBの小規模構成から最大128コア、メモリ480GBまでの大規模構成まで、ビジネスの規模に応じて選択可能です。サーバーの作成後でもスペックの変更が容易なため、事前の容量設計が要りません。
この仮想サーバーに搭載されているオートスケール機能により、シーンに応じて自動的にリソースを最適化できます。
単一サーバーの性能を向上させる「スケールアップ」と、サーバー台数を増やして負荷を分散する「スケールアウト」の両方に対応しているため、用途に応じて最適な拡張方法を選択できます。
他社クラウドサービスと比べても、国内データセンターを利用することで安定した低遅延の通信を実現しています。また、オートスケール機能は無料で提供されるため、初期コストを抑えながら拡張性の高いシステムを構築できます。
さくらのクラウドのスケーラビリティ機能の導入事例
さくらのクラウドのスケーラビリティ機能は、さまざまな業種や規模の企業で活用されています。とくにアクセス数の変動が激しいWebサービスやIoTシステムの運用において、その効果を発揮しています。
以下では、2つの成功事例をご紹介します。
株式会社アイエスイー
株式会社アイエスイーは、獣害IoT、海洋IoT、林業IoT、地域IoTの企画・開発・販売を手がけています。
獣害など農山漁村の困りごとをIoTで解決するため、 「さくらのクラウド」「さくらのVPS」を最大限に活用されています。
課題
- サーバーにアクセスが集中した際に遅延が発生
- 容易にはスケールアップできないオンプレミス環境
- 課金の仕組みがわかりにくいクラウドは選べない
効果
- 停止や遅延のない安定稼働のクラウド
- 利用者の増加に合わせて「さくらのVPS」を増強
- 安価にIoTソリューションを提供できる
株式会社アイエスイーはオンプレミス環境でサービスを運用していましたが、アクセス集中時の遅延が大きな課題となっていました。とくに全国400か所以上で稼働する獣害対策システム「まるみえホカクン」では、安定した運用が求められていました。
さくらのクラウドへの移行後は、アクセスが集中する状況でも遅延のない安定した運用が実現。また、海洋データを収集する「うみログ」では、全国100か所以上のデータを30分間隔で収集していますが、システムの停止や遅延は発生していません。
自治体との取引が多い株式会社アイエスイーにとって、「さくらのクラウド」や「さくらのVPS」の堅牢なセキュリティと安定したコストは、自治体への提案のしやすさにもつながっています。
株式会社アットシステム
株式会社アットシステムは、一斉連絡システム・出願および入学手続きシステム・勤怠管理システムの開発・運用・保守と関連する支援作業をおこなっています。
課題
- シーズンによりサーバーへのアクセス数が異なる
- スケールアップ/ダウンができない固定スペックでは余計なコストがかかる
- 高い機密性を持つ出願データをセキュアに保管したい
効果
- アクセス数に合わせたリソースの増減とコストカットを実現
- 専用サーバーに保管している出願データもクラウドからセキュアに見られるように
株式会社アットシステムは、インターネット出願システム「Ckip」の運用におけるアクセス変動が課題となっていました。12月から2月の入試シーズンにアクセスが集中し、それ以外の時期は比較的少ないという特徴がありました。
「さくらのVPS」から「さくらのクラウド」へ移行したことで、繁忙期と閑散期に応じたリソースの調整が可能に。必要なときに必要な分だけリソースを確保でき、コストの最適化も実現しました。
また、機密性の高い出願データの安全な管理も、専用サーバーとの連携によって実現しています。
まとめ
スケーラビリティの向上は、現代のビジネス成長において無視できない問題です。
さくらのクラウドは、オートスケール機能によるリソース調整、安定した運用環境を提供することで、この課題に対する効果的なソリューションとなっています。
導入事例で見たように、アクセス数の変動が大きいWebサービスやIoTシステムにおいて、とくに高い効果を発揮しています。
ビジネスの成長とともに柔軟にスケールできる環境を構築するうえで、さくらのクラウドは理想的な選択肢といえるでしょう。
さくらのクラウドチーム
コラムでは、さくらのクラウドに関連するビジネス向けの内容や、ITインフラ技術の説明などを掲載しています。