自治体DXとは?メリット・課題・成功のポイントと先進事例をわかりやすく解説

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自治体DXとは?メリット・課題・成功のポイントと先進事例をわかりやすく解説

自治体DXという言葉は広く知られるようになりましたが、その具体的な内容や進め方をイメージしにくい方も多いのではないでしょうか。本記事では、自治体DXの基本から、取り組むメリットや課題、成功のポイントまでわかりやすく解説します。最後に、先進事例もご紹介します。

目次
  1. 自治体DXとは
    1. 自治体DXの概要
    2. 自治体DXが求められる理由
    3. 自治体の職員不足
    4. 住民ニーズの多様化
  2. 自治体DXのメリット
    1. 自治体職員の業務効率化
    2. 住民サービスの質の向上
  3. 自治体DXのよくある課題
    1. 業務プロセスが複雑
    2. ITリテラシーの不足
    3. 既存システムのブラックボックス化
  4. 自治体DXを成功させるためのポイント
    1. 段階的な取り組み 
    2. 実績のあるクラウドサービスの選定
    3. DXを推進する人材の育成
  5. 自治体DXの先進事例
    1. プッシュ型通知による積極的な情報発信(千葉市)
    2. AI予約配車システムを活用したフルデマンド交通(岡山県久米南町)
    3. AIによるSNS災害情報分析システム(静岡県磐田市)
    4. IoT技術を活用した高齢者の見守りサービス(鳥取県)
  6. まとめ

自治体DXとは

自治体DXについて、その概要と、なぜ今それが求められているのかを見ていきましょう。

自治体DXの概要

自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、地方自治体がデジタル技術を活用して住民サービスの向上と業務効率化を実現し、持続可能な自治体運営を目指す取り組みです。

単なるIT化ではなく、業務プロセスや組織文化を根本から見直し、質の高い行政サービスを提供することを目指しています。

具体的な取り組み例としては、以下のようなものがあります。

  • ペーパーレス化の推進:紙書類の電子化や電子決裁の導入による効率化
  • クラウドサービスの導入:拡張性・柔軟性のあるIT基盤による業務効率化
  • セキュリティ対策の強化:個人情報や行政データの安全性確保
  • AIチャットボットやRPA、FAQの導入:住民対応や定型業務の自動化
  • バックオフィス業務へのシステム導入:人事・会計・庶務など内部事務の効率化
  • デジタルデバイド対策:高齢者やデジタルに不慣れな人も利用しやすい環境整備

急速な人口減少が見込まれるなか、総務省は自治体が持続可能なかたちで行政サービスを提供するため「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定しました。その計画に基づき、全国の自治体でDXが進められています。

また、2025年度末までに基幹システムの標準化移行が全国の自治体に義務づけられており、自治体DXを推進するうえで制度的な転換点を迎えようとしています。

参考:総務省|自治体DXの推進

自治体システム標準化についてくわしくはこちら

自治体DXが求められる理由

多くの自治体がDXへの取り組みを求められる理由は、おもに2つあります。

自治体の職員不足

少子高齢化と人口減少が日本全体で深刻化しています。自治体も例外ではなく、職員数は減少傾向にあり、同時に高齢化による人材構成の偏りも進んでいるのが現状です。その結果、一人ひとりの職員にかかる負担は増大し、従来の紙ベース・対面中心の業務運営だけでは、必要な行政サービスを安定して提供し続けることが困難になっています。

住民ニーズの多様化

住民のライフスタイルや価値観の多様化により、行政サービスへの要求も複雑化しています。24時間365日利用可能なオンラインサービスや、個人の状況に応じたきめ細やかなサービス提供など、民間では当たり前になりつつあるサービス水準が求められています。

自治体DXのメリット

自治体がDXに取り組むことで、次のようなメリットを得られます。

自治体職員の業務効率化

デジタル技術の活用によって、職員の業務負担を大幅に軽減できます。これまで手作業でおこなっていたデータ入力や書類処理といった定型業務をデジタル化することで、繰り返し作業にかかる時間の削減が可能です。また、電子決裁やペーパーレス化の仕組みを整えることで、意思決定や情報共有もスムーズになります。

限られた人材でも効率的に業務を遂行できるため、職員が本来注力すべき企画立案や住民対応など、より付加価値の高い業務に時間を割けるようになるでしょう。

住民サービスの質の向上

デジタル技術を活用してオンライン手続きやオンライン相談ができるようになれば、住民の利便性は大きく向上します。さらに、マイナンバーを活用したシステム連携が進むことで、書類提出が不要となり、手続きの簡素化が期待されます。個々の状況に応じた情報提供がシステム上でおこなわれることで、より迅速かつ的確な住民対応も可能になるでしょう。こうした積み重ねは、自治体への信頼醸成にもつながります。

自治体DXのよくある課題

自治体DXのメリットを理解していても、推進していく過程で多くの場合、次のような課題に直面します。

業務プロセスが複雑

多くの自治体では、長年にわたって蓄積された業務手順や規則により、プロセスが複雑化しています。複数の部署をまたがる手続きの煩雑さや紙ベースの業務フローへの依存、法令や条例による制約の多さが課題です。

また、前例踏襲が重視される組織文化が根強く残っている場合には、業務改善に対する現場の抵抗感もDXの大きな障壁となる場合があります。

ITリテラシーの不足

職員のITスキルのばらつきや、デジタル技術への理解不足は、DX推進の大きな障壁となります。世代間でのデジタル技術習熟度の差や新しいシステムへの抵抗感、研修機会の不足がおもな課題です。デジタル技術に対する職員のスキルアップを図る継続的な取り組みが必要です。

既存システムのブラックボックス化

長年にわたって使用してきた既存システムの仕組みが複雑化し、職員でも全容を把握できないケースも少なくありません。システム開発時の仕様書や設計書の散逸、担当者の異動による知識の断絶、カスタマイズの積み重ねによる複雑化などが主な原因です。

この状況では、新しいシステムとの連携や移行が困難となり、DXを進めるうえでの足かせとなります。

自治体DXを成功させるためのポイント

自治体DXを円滑に進めるためには、次のポイントを押さえておくことが大切です。

段階的な取り組み 

自治体DXでは一度にすべてを変革しようとせず、段階的に進めることが効果的です。比較的簡単で効果が見えやすい業務から着手し、成果の検証や改善を経て、横展開していくとよいでしょう。職員への定着と理解を促しながら、徐々に組織全体の意識変革につなげていけます。

実績のあるクラウドサービスの選定

自治体DXの成功には、実績のあるSIer選定が重要です。「ガバメントクラウド整備のためのクラウドサービス」としてデジタル庁の認定実績があるクラウド事業者であれば、セキュリティや法令遵守といった自治体特有の要件にもしっかり対応できます。
また、同規模・同種の自治体での導入事例があるかどうかも重要な判断基準です。導入後のサポート体制や制度への理解と対応力も含めて評価し、適切なSIerを選定しましょう。

ガバメントクラウドについてくわしくはこちら

ガバメントクラウドとは?メリットや仕組み・対象サービスをわかりやすく解説

DXを推進する人材の育成

自治体DXを継続して進めるためには、内部人材の育成が不可欠です。DXを推進するリーダーだけでなく、システム管理者、住民対応スタッフなど、それぞれの役割に応じて計画的に人材を育成する必要があります。外部研修への派遣と内部での知識共有、先進的な取り組みをおこなう自治体への視察や人事交流、SIerとの協働による実践的なスキルを身に着けることが重要です。

自治体DXの先進事例

総務省が公開している自治体DXの先進事例のなかから4つの事例を紹介します。

参考:総務省 地域DXポータルサイト

プッシュ型通知による積極的な情報発信(千葉市)

支援が必要とする人ほど、自分で制度を調べる余裕がないという課題から、能動的な情報提供への要望がありました。千葉市では、市が保有する住民情報を活用・分析し、各種手当の受給や健康診査などの制度を利用できる可能性がある市民に対して、SNSやメールで個別に通知するサービスを実施しています。この通知は申請期限や受付期間に合わせた適切なタイミングで配信されており、市民の受給漏れ防止と利便性の向上につながっています。

参考:千葉市:あなたが使える制度お知らせサービス ~For You~

AI予約配車システムを活用したフルデマンド交通(岡山県久米南町)

岡山県久米郡久米南町では、民間の路線バスやタクシー事業者が存在せず、交通の利便性が限られていました。こうした課題を解決するため、町はAI予約配車システムを活用したフルデマンド交通「カッピーのりあい号」を導入しました。

利用者はスマートフォンアプリから乗車・降車場所や時刻、人数を登録するだけで、運行時間内であればいつでも乗り合い車両を配車できます。この取り組みによって、町内の移動利便性が大きく向上し、住民の生活を支える新たな交通手段が定着し始めています。

参考:久米南町/公共交通

AIによるSNS災害情報分析システム(静岡県磐田市)

静岡県磐田市では、2022年の台風15号発生時に夜間の豪雨や冠水により現地確認が困難となり、被害状況の把握が翌日に持ち越されるという事態が生じました。

この経験を踏まえ、市は2023年4月にAIを活用した「SNS災害情報分析システム」を導入しました。市民やニュースアプリから寄せられる投稿をAIと専任チームが解析し、デマやフェイクニュースを排除したうえで位置情報付きの正確な情報として配信する仕組みです。

市民は匿名で災害リスクを投稿でき、災害対策部門はリアルタイムで被害状況を把握できるようになりました。市民自身もアプリ上の地図で最新の災害情報を即時に確認できます。

参考:ニュースアプリ「NewsDigest(ニュースダイジェスト)」|磐田市公式ウェブサイト

IoT技術を活用した高齢者の見守りサービス(鳥取県)

県営住宅に住む単身高齢者の孤立を防ぐため、鳥取県では2021年度からIoTを活用した見守りサービスを導入しています。対象となる入居者には、人感センサー付き端末を住戸内に設置し、さらにウェアラブル端末を組み合わせて日常の動きを把握します。異変を感知した際には、見守り事業者へ自動で通報され、迅速に安否確認がおこなわれる仕組みです。月額500円という低料金に設定することで、高齢者の経済的負担を最小限に抑え、安心して暮らせる環境づくりに役立てています。

参考:高齢者居住安定確保計画/とりネット/鳥取県公式サイト

まとめ

自治体DXは、人口減少が進むなかでも、質の高い住民サービス提供を継続していくためには避けては通れない取り組みです。業務効率化や住民サービス向上といった効果を実現するには、段階的な導入や実績のあるSIerの選定、人材育成などポイントを押さえた取り組みが欠かせません。先進事例から学びつつ、自らの自治体に合ったDXを推進していきましょう。

さくらのクラウド」は、高いセキュリティ基準とシンプルで使いやすいインターフェースを備えており、自治体が安心してDXを進められる環境を提供しています。

実際に、多くの自治体DXで活用され、着実な成果を上げています。

クラウド導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

さくらのクラウドチーム
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