データセンターとは?クラウドとの違いをわかりやすく解説
昨今、企業のDXのニーズは高まっており、ITでもとりわけシステムやデータの利活用が急速に進んでいます。そのような状況下、インターネット用のサーバーやデータ通信などの装置を設置・運用することに特化した施設であるデータセンターでは、災害が多い日本において近年利用が加速しています。
本記事では、データセンターの概要やクラウドとの違い、メリット・デメリットなどを解説します。
データセンターとは
データセンターとは、サーバーやデータ通信を行うネットワーク機器などのIT機器を収容するために作られた施設です。データセンターにはさまざまな設備がありますが、主要なものは以下のとおりです。
サーバーラック
サーバーやストレージを設置するための専用の棚
電力供給設備
無停電電源装置(UPS)、発電機、電源分配ユニット(PDU)などの電力供給設備
ネットワークインフラ
ルーター、スイッチ、ファイアウォール、ロードバランサーなどのネットワーク機器
空調・冷却システム
空調システム、冷却塔などの温度管理設備
セキュリティ対策設備
監視カメラ、バイオメトリクス認証、入退室管理システムなどの物理的セキュリティ設備
災害対策設備
消火設備(ガス消火、スプリンクラー)、災害復旧(DR:Disaster Recovery)システム
このように多様で充実した設備があることから、近年では自社設備のオンプレミス環境のサーバー機器をデータセンターへ移設する企業も増えています。
また、総務省の「令和4年版 情報通信白書」によると、2021年の日本国内におけるデータセンターサービスの市場規模は1兆7,341億円ですが、2025年には約56%増加の約2兆7,000億円にもなるという予測もあります。今後もデータセンターは注目を浴び続けるでしょう。
データセンターが提供するサービス
データセンターが提供するサービスには「ハウジング」「ホスティング」の2種類があります。以下でそれぞれについて詳しく解説していきます。
ハウジング
ハウジングとは、データセンター内のサーバー収容スペースであるラックやその他の設備機器を貸し出すサービスを指します。
ハウジングでは、企業が所有するサーバー機器をデータセンターに設置し、ネットワークインフラや空調・冷却システムなどのデータセンターの設備を利用します。サーバーの管理や運用に必要な設備や、高度な専門知識を持つ人材を自社で用意しなくてよい点がメリットと言えるでしょう。
ホスティング
ホスティングは、ベンダーが用意したITシステムを使用するサービスを指し、インターネットを通じて利用することからクラウドホスティングとも呼ばれています。
自社でサーバーを用意することなく、ニーズに合わせてサーバーを借りることができるため、割安になる傾向にあります。
費用面のみならず、サーバーの保守・運用はベンダーが行うため、ITに詳しい人材が自社にいない場合でも安心です。
データセンターとクラウドの違い
データセンターとクラウドはしばしば比較対象となることが多いです。物理的に利用環境を提供するデータセンターに対して、クラウドはインターネットを経由し、仮想的にハードウェアやアプリケーションの利用環境を提供します。
また、データセンターは設備を提供するためハウジングのサービスに属します。一方で、クラウドはベンダーが用意したITシステムを使用するためホスティングのサービスに属します。
事業者の提供サービス分類の観点で、データセンター(ハウジング)とクラウド(ホスティング)の違いは以下のとおりです。
データセンター (ハウジング) |
クラウド (ホスティング) |
|
---|---|---|
サービス内容 |
|
|
機器の購入の有無 | ユーザー側が購入 | サービス提供側が購入 |
機器の運用 | ユーザー側が運用 | サービス提供側が運用 |
カスタマイズの可否 | 自社ニーズに合わせて可能 | 仕様が決まっており難しい |
利用料金 | 比較的高い | 比較的安い |
クラウドサービス(IaaS)
クラウド(ホスティング)はIaaS(イアース)と呼ばれます。IaaSはインターネットを通じてコンピュータの基盤となるネットワーク、サーバーシステム、電源設備、ストレージなどのリソースを提供するクラウドコンピューティングの一形態です。
IaaSについて詳しくはこちらクラウド運用と比較したデータセンターのメリット
次にクラウド運用と比較した場合のデータセンターのメリットは以下のとおりです。
データセンターを利用するメリット
- 通信環境が安定している
- 運用コストを抑えることができる
- セキュリティ面を強化できる
- トラブルに対応してもらえる
- BCP対策になる
それぞれについて詳しく解説します。
通信環境が安定している
通信環境が安定していることは、データセンターの大きなメリットと言えるでしょう。データセンターでは、サーバーをはじめとするネットワーク機器運用に際して必要な電力の安定供給や、停電など緊急時に備えた自家発電装置や無停電電源などが導入されているため、安定的な通信環境が提供可能です。
また、サーバー管理に最適な温度・湿度が24時間365日体制でコントロールされているなど、電力のみならずさまざまな点で安定した通信環境を確保する仕組みがあります。
一方でデータセンターではなくクラウドの場合、周囲の利用環境の影響を受けやすく、通信速度が低下するリスクがあるでしょう。
運用コストを抑えることができる
データセンターの利用により、運用コストを抑えることができるのもメリットです。本来、サーバーを安定的に運用するには前述したようなデータセンターにある設備が必要になりますが、それらすべてを自社で揃え、運用する人材を雇用すると相当な費用がかかってしまいます。
設備や人件費などを考慮すると、データセンターを利用することでそうした費用を抑えることができ、自社の業務負担も減らすことができます。
セキュリティ面を強化できる
データセンターを利用することで、セキュリティ面の強化につながります。データセンターでは、自社で用意するサーバーやネットワークインフラと比較して、強固なセキュリティ対策が講じられています。
具体的には以下のようなセキュリティ対策があります。
データセンターのセキュリティ対策
- サーバーをサイバー攻撃から守る
- データの自動的なバックアップ
- データセンターの正確な位置情報は外部公開せず、部外者の侵入リスクを軽減
- 生体認証やカードによる入出管理
- 24時間365日、有人での管理
トラブルに対応してもらえる
データセンターの利用により、もしものトラブルに対応してもらえるのはメリットと言えます。データセンターにはサーバーやインターネットインフラなどITの専門家が常駐しており、万が一のトラブルがあった際には迅速な対応を受けることが可能です。
また、自社でサーバーの保守・運用に特化した人材を確保することは簡単ではないため、データセンターの利用はトラブルのリスクヘッジの観点だけでなく、人材確保の観点からもメリットがあります。
BCP対策になる
データセンターの利用はBCP対策にもつながります。BCP対策とは、大きな事故や自然災害などのトラブルが発生した場合でも事業が継続できるように対策しておくことを指します。データセンターでは、強固な災害対策が施されており、BCP対策のメリットを享受できます。
具体的には以下のような災害対策が実施されています。
- 火災を事前に予兆・検知するシステムの導入
- 火災時に消火するシステムの導入
- 災害発生リスクの低い立地
- データセンターの建物自体が免震・耐震構造
このように、自社でサーバーやネットワークインフラを抱えるよりも、はるかに安全な体制で管理ができます。
複数のリージョンを使った冗長構成
さくらインターネットのBCP対策の一つ、東京リージョンと石狩リージョンを利用した冗長構成をご紹介します。「さくらのクラウド」は、東京のデータセンターと北海道の石狩データセンターで設備を保有してホスティングのサービスを提供しています。
災害などで停電が発生した際、大規模なシステム障害を回避するため、データセンターを地理的に離れた場所に設置することで、被害を最小限に留めます。これは「DR(Disaster Recovery/ディザスターリカバリー)」と呼ばれるもので、事業継続計画(BCP)における概念の一つです。
クラウド運用と比較したデータセンターのデメリット
安定した通信環境や強固なセキュリティなど多くのメリットがあるデータセンターですが、デメリットもあります。
データセンターのデメリットは以下のとおりです。
データセンターを利用するデメリット
- クラウドよりはコストがかかる
- データセンターまで足を運ばなければいけないケースがある
順に解説していきます。
クラウドよりはコストがかかる
豊富な設備を利用できる反面、クラウドよりもコストがかかってしまうのはデメリットです。
一般に料金体系は「月額制+初期費用」という形態が多く、具体的にかかる費用は以下のとおりです。
データセンター利用にかかる費用
- 初期費用
- 月額利用料
- 回線料
- オプションサービスの追加料金
これらの費用はデータセンターによって料金が異なるため、契約前には事前に見積もりを取り、クラウドや複数のデータセンターを比較した上で検討するとよいでしょう。
データセンターまで足を運ばければいけないケースがある
データセンターまで足を運ばなければいけないケースがあることもデメリットと言えます。サーバーの運用・設定は遠隔操作が可能なものの、物理的な障害や預けている機器の設定・保守は自社で行うため、データセンターまで直接足を運ぶ必要があります。
そのため、データセンターと自社が離れている場合は移動時間や交通費などのコストが発生してしまう点は留意しておきましょう。
データセンターの選び方のポイント
ここまで、メリットやデメリットを解説しましたが、以下ではデータセンターを選ぶポイントを解説します。
データセンターを選ぶときのポイント
- データセンターの立地や距離
- トラブル時の体制
- セキュリティ対策の実施具合
- 利用料金
それぞれについて詳しく解説していきます。
データセンターの立地や距離
まず、データセンターの立地や自社からの距離が重要です。遠隔での運用が可能な部分もありますが、ハウジングサービスを利用する場合はサーバー機器の更新・保守などでデータセンターに足を運ぶ機会も少なくありません。
時間・コストの観点からも交通の便がよく自社から訪問しやすい立地のデータセンターを選ぶようにしましょう。
トラブル時の体制
災害や日常的なトラブルへの体制も重要です。アプリやWebサービスを提供している企業はもちろん、昨今は社内システムにデータセンターを活用している企業も少なくありません。社内外問わず企業活動がストップしないよう、トラブル時の体制確認は不可欠でしょう。
セキュリティ対策の実施具合
交通の利便性や設備の質なども重要ですが、セキュリティ対策の実施具合も大切です。
昨今、サイバー攻撃の脅威は高まっており、企業が抱える個人情報などの機密情報もサイバー攻撃の対象となっています。不十分なセキュリティが原因で情報漏洩や損失を発生させないよう、24時間365日体制での警備や管理体制を敷いているデータセンターを選ぶとよいでしょう。
利用料金
データセンターの利用は月額の費用が必要になり、利用料金が高額だと企業の利益を圧迫しかねないため、利用料金を確認するのも重要なポイントです。
月額料金に電力料金を含むかどうか、各オプションサービスの金額など、料金体系や費用感はデータセンターによって異なります。前述したとおり、一度見積もりを取り寄せたり説明を聞いた上で比較・検討するとよいでしょう。
まとめ
本記事では、データセンターの概要やメリット・デメリット、選ぶポイントなどを解説しました。
データセンターはクラウドよりはコストがかかるものの、通信の円滑化やセキュリティ体制の強化につながる可能性があります。
本記事がデータセンターの新設や移行の際の検討材料となれば幸いです。
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