最高水準のセキュリティを実現するクラウドHSM 〜さくらのクラウドの暗号鍵管理 #4〜

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クラウドHSMは、クラウド事業者が提供する専用ハードウェア(HSM:Hardware Security Module)を用いた暗号鍵管理サービスです。暗号鍵を生成・保管・利用する処理を、外部に鍵を出すことなくHSM内部だけで行うため、最高水準のセキュリティを実現できます。金融や公共分野など、FIPS 140-2/3などの厳格なセキュリティ規格に準拠した鍵管理が求められる場面で利用されます。自社で高価なHSM機器を調達・運用する必要がなく、クラウド環境で容易に導入できるのも特長です。

前回の記事はこちら
多くのシーンで活躍するシークレットマネージャとKMS 〜さくらのクラウドの暗号鍵管理 #3〜

目次
  1. クラウドHSMの基本機能
  2. クラウドHSMとKMSの使い分け
  3. 導入効果
  4. クラウドHSMが求められる場面
    1. 金融機関の取引データ暗号化・決済システムの鍵管理
    2. 政府・自治体・公共機関の機密文書暗号化・署名
    3. IoTデバイスや製造業での鍵埋め込み
    4. データベース/大規模データレイクの暗号化鍵管理
  5. まとめ

クラウドHSMの基本機能

「さくらのクラウド」の「クラウドHSM」では、次の機能を提供しています。

【クラウドHSMの基本機能】

  • キー管理と保護:専用ハードウェアにより、秘密鍵が外部へ漏れるリスクを最小限に抑える
  • 法的・コンプライアンス要件の遵守:FIPS 140-2準拠ハードウェアを採用し、厳しい規制やコンプライアンス要件に対応可能
  • 統合と簡単な管理:ほかのクラウドサービスとの統合が容易で、シンプルな運用が可能なマネージドサービスとして提供

クラウドHSMとKMSの使い分け

クラウドHSMは、KMSと同じく「暗号鍵管理」の基盤を提供しますが、対象や強度が異なっています。利便性と統合性を重視するならKMS、最高水準のセキュリティと専用性を重視するならクラウドHSMというように、自社システムの要件に応じて選定することが重要になるでしょう。

  • KMS:クラウドアプリケーションやシステムで幅広く利用できる汎用的な鍵管理サービス
  • クラウドHSM:より厳格なセキュリティや管理規則・規制への適合が必要なシナリオでの利用

導入効果

クラウドHSMを導入することで、次の効果が期待できます。

  • 最高水準の鍵セキュリティをクラウドでも享受可能
  • 自社でHSMを調達・運用するコストを削減
  • 鍵が物理的に安全に守られることで、内部不正や攻撃リスクを大幅に低減
  • コンプライアンス対応(金融・政府調達など厳格な業界規制に必須)

クラウドHSMが求められる場面

クラウドHSMは、次のような場面での利用を想定しています。

金融機関の取引データ暗号化・決済システムの鍵管理

金融業界ではクレジットカード情報や送金データなどを暗号化することが必須であり、PCI DSSなどで知られる決済業界の一連のセキュリティ規格では「HSMを使った安全な鍵管理」が求められます。そこで、決済システムに使う暗号鍵をクラウドHSMで生成・保管し、アプリケーションではAPI経由で暗号化/復号を実行。鍵そのものをシステム外部に出しません。これにより、内部不正や鍵漏洩リスクを抑制しつつ、規制要件を満たし、監査対応も容易にします。

政府・自治体・公共機関の機密文書暗号化・署名

行政文書や住民情報などの機密データは法的に長期保存が義務付けられ、改ざん防止や真正性の担保が重要になります。そこで、文書の電子署名鍵をクラウドHSMで保管し、文書署名・検証の処理を安全に実行。保存データもクラウドHSMの鍵で暗号化します。これにより、情報漏洩を防止しつつ、電子文書の法的効力や監査証跡を確保します。

IoTデバイスや製造業での鍵埋め込み

IoTデバイスは大量に出荷されるため、出荷時のデバイス認証鍵を安全に生成・管理しないと、大規模なセキュリティ事故につながります。そこで、製造ラインごとにクラウドHSMでデバイス鍵を生成し、書き込み用の安全な仕組みで各IoT機器に埋め込みます。これにより、鍵の使い回しや漏洩を防止し、デバイス認証やソフトウェアアップデート配信を安全に実現します。

データベース/大規模データレイクの暗号化鍵管理

医療データや顧客情報などを保存するDB・データレイクでは暗号化は必須の機能です。そこで、暗号化に使うマスターキーをクラウドHSMで生成・保管し、アプリケーションからは復号APIを呼び出すだけで鍵そのものに触れないようにします。これにより、膨大なデータを保護しつつ、誰が鍵を使ったかなどの記録を求める監査要件を満たすことができます。

まとめ

クラウド利用やシステム連携の拡大により、セキュリティ強化・運用効率化・コンプライアンス対応のため、鍵とシークレットの管理が重要かつ不可欠になっています。
さくらのクラウドでは、そのために次のサービスを提供しています。

安全なクラウドシステムの構築・運用のため、さくらのクラウドのシークレットマネージャおよびKMS・クラウドHSMを活用ください。
各サービスの機能や使い方の詳細は、さくらのクラウドマニュアルをご覧ください。

さくらのクラウドチーム
制作者

さくらのクラウドチーム

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