アクセス集中の原因や影響とは?サービス停止を防ぐ対策を目的別に解説

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テレビ放送や大規模キャンペーン、SNSでの拡散などをきっかけに、Webサイトにアクセスが集中することは珍しくありません。突発的なアクセス集中は、喜ばしい状況に見えますが、準備不足のサーバー環境では逆にサービス停止やユーザー離れを引き起こすおそれがあります。本記事では、アクセス集中の原因や影響、アクセス集中によるサービス停止を防ぐための対策を解説します。

この記事でわかること
  • Webサイトのアクセス集中における原因と影響
  • 主なアクセス集中の対策方法
目次
  1. アクセス集中とは
  2. アクセス集中の原因
    1. プロモーション活動によるトラフィック増加
    2. SNSやメディアでの拡散
    3. サイバー攻撃
  3. アクセス集中による影響
    1. リソース枯渇によるサービス停止
    2. ユーザーの離脱
    3. 復旧コストの発生
  4. アクセス集中によるサービス停止を防ぐための対策
    1. 予測可能なアクセス集中に備える
    2. 予測困難な突発的なアクセス集中に備える
    3. 悪意のあるアクセス集中から保護する
    4. 継続的なアクセス増加に対応する
  5. まとめ
    1. サービスの詳細についてはこちら

アクセス集中とは

アクセス集中とは、Webサイトに通常時を大幅に上回るユーザーが短時間に同時アクセスする現象を指します。こうした状況は、大規模セールやキャンペーンの開始時など予測可能な場合もあれば、突発的に発生する予測困難な場合もあります。

多くのアクセスが集まることは、ビジネス面では絶好のチャンスですが、技術的には大きな課題となります。通常のサーバー構成では想定外の負荷に耐えられず、最悪の場合はシステム全体が停止する事態を招きます。

アクセス集中の原因

アクセス集中は、さまざまな要因によって引き起こされます。

プロモーション活動によるトラフィック増加

大規模セールや限定商品の発売、テレビCMなどのプロモーション活動は、短時間で大量のアクセスを集中させます。特に発売時間や放映時間が決まっている場合は、その瞬間に多くのユーザーが一斉にサイトへアクセスし、サーバーに大きな負荷がかかります。

SNSやメディアでの拡散

インフルエンサーの投稿や、ニュースサイトでの紹介により、予期せぬタイミングで急激なアクセス増加が発生することがあります。いわゆる「バズる」現象が発生すると、数分から数時間の間に通常の何倍ものトラフィックが発生します。こうした急激なアクセスに備えていないサイトでは、サーバーが処理しきれず、すぐにサーバーダウンしてしまうケースも少なくありません。

サイバー攻撃

DDoS攻撃や、自動化されたプログラム(ボット)による不特定多数のアクセス要求といったサイバー攻撃によって、アクセス集中が引き起こされることがあります。これらの攻撃は通常のユーザーアクセスを装いながら、短時間で大量のリクエストを送信し、サーバーリソースを枯渇させ、サービス不能にすることを目的としています。

アクセス集中による影響

アクセス集中がWebサイトに発生すると、多くの場合、以下のような影響が発生します。

リソース枯渇によるサービス停止

アクセス集中が発生すると、サーバーのリソース(CPU、メモリ、ネットワーク帯域など)が枯渇し、最終的にはサービスが完全に停止してしまうことがあります。ユーザーからのリクエストに対応できなくなり、「503 Service Unavailable」や「504 Gateway Timeout」などのエラーが表示され、サイト全体がアクセス不能になります。予約開始やセール開始といった重要なタイミングでのサービス停止は、大きな機会損失につながります。

ユーザーの離脱

サイトの応答が遅くなったり、ページが正常に表示されなかったりすると、ユーザーはすぐに離脱してしまいます。アクセス集中時の遅延は、せっかく訪れたユーザーを失うことになり、コンバージョン率の低下につながります。

さらに、こうした状態が繰り返されれば、「使いづらい」「いつも重い」といったネガティブな印象が定着し、ブランドイメージを損なうリスクが高まります。

復旧コストの発生

サーバーがダウンした場合、システム管理者は早急に復旧作業をおこなう必要があります。これには時間と人的リソースが必要となります。特に営業時間外や休日の場合は、対応にかかるコストが平常時よりも大幅に増えることも少なくありません。

また、緊急対応としてサーバーリソースを急増強する場合、通常よりも割高なコストがかかる可能性もあります。

アクセス集中によるサービス停止を防ぐための対策

アクセス集中によるサービス停止を防ぐための対策を目的別に紹介します。

予測可能なアクセス集中に備える

大規模セールやキャンペーンの実施、新商品発表、メディア掲載など、事前に大量アクセスが予想できる場合には、以下の対策が有効です。

一時的なサーバーリソースの増強

サーバーリソースの増強には、CPU・メモリなどのリソースを増強するスケールアップと、サーバー台数を増やすスケールアウトがあります。状況に応じて両者を組み合わせることも有効です。

スケールアップ・スケールアウトについて詳しくは以下の記事をご覧ください。

CDN(Content Delivery Network)の活用

CDNとは、世界各地に配置されたサーバーから、ユーザーにもっとも近い拠点を通じてコンテンツを配信する仕組みです。画像やCSS、JavaScriptなどの静的コンテンツをCDNから配信することで、オリジンサーバーへの負荷を大幅に軽減できます。ページ表示を高速化できるため、ユーザーにとってもメリットがあります。

参考:高速・安定CDN ウェブアクセラレータ | さくらインターネット

待機室システムの導入

アクセス数を制御するための順番待ちキューを実装し、サーバーの処理能力に合わせて少しずつユーザーをサイトに誘導します。アクセス集中を抑制しながら、待ち時間や順番を可視化することで、ユーザーの離脱を防止します。

予測困難な突発的なアクセス集中に備える

ニュース速報やSNSでの話題拡散などにより、予期せぬアクセス集中が発生するケースがあります。これらの状況は事前予測が難しいため、柔軟かつ即応性の高い対策が必要です。

オートスケーリングの活用

クラウド環境を利用している場合は、オートスケーリング機能を活用することで、負荷状況に応じて自動的にリソースを調整できます。突発的な高トラフィック時でも安定運用が可能です。

監視ツールの導入

トラフィック急増の早期検知アラートシステムを導入し、異常が検出された際に自動対応フローを実行する仕組みを整備します。平常時とは異なるアクセスパターンをリアルタイムで分析することで、問題が大きくなる前に対処できます。

悪意のあるアクセス集中から保護する

サイバー攻撃からサーバーを保護するためのセキュリティ対策には次のようなものがあります。

DDoS対策サービスの導入

異常な大量リクエストを検知すると自動的に遮断する機能を持ちます。

WAF(Web Application Firewall)の導入

SQLインジェクションや、クロスサイトスクリプティングなどのアプリケーション層の攻撃を検知・防御します。自動ボットによる不正アクセスの防止にも対応しています。

より根本的なセキュリティ強化のためには、あらかじめシステムの弱点を洗い出す脆弱性診断も有効です。

脆弱性診断について詳しくは以下の記事をご覧ください。

継続的なアクセス増加に対応する

サービスの成長に伴い、日常的なアクセス数が徐々に増加していく場合には、長期的な視点での対策も必要です。

サーバーを複数構成し、ロードバランサを用いて負荷を分散処理することは基本的な取り組みのひとつです。アクセス増加に応じて段階的にサーバーを追加できるため、初期投資を抑えつつ柔軟にアクセスの増加に対応することができます。クラウド環境では、オートスケーリングと組み合わせることで、より効率的な運用が可能です。

ロードバランサや負荷分散について詳しくは以下の記事をご覧ください。

まとめ

アクセス集中によるサービス停止を防ぐための対策は、サービスの特性や予想されるアクセスパターンによって適切な方法が異なります。これらを適切に組み合わせることで、さまざまな状況下でもサービスの安定稼働が可能です。クラウドサービスの普及により、従来よりも迅速かつ効果的な対策が実施できるようになっています。定期的に最新の技術動向をチェックし、対策の見直しをおこなうことをおすすめします。

さくらのクラウドの「オートスケール」機能を活用すれば、アクセス状況に応じて仮想サーバーの台数を自動的に増減させることが可能です。これにより、アクセス集中時でも安定したサービス提供が実現でき、無駄なコストを抑えながら効率的な運用がおこなえます。

さらに、静的コンテンツの配信負荷を軽減したい場合には、さくらインターネットが提供するCDNサービス「ウェブアクセラレータ」の活用も有効です。キャッシュサーバーからコンテンツを配信することで、オリジンサーバーへの負荷を抑えつつ、高速な表示を実現します。突発的なアクセス集中にも強く、ユーザー体験の向上にもつながります。

サービスの詳細についてはこちら

さくらのクラウドチーム
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さくらのクラウドチーム

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